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2022年07月号 「下顎臼歯の根尖に認めた透過像」
4.動脈瘤様骨嚢胞

処置および経過:全身麻酔下で右側下顎骨にある線維性骨異形成症の減量術を実施した。その際、rd6の根尖部に認めた嚢胞様病変を摘出した。術後、経過良好である。線維性骨異形成症を発症する二次性の動脈瘤様骨嚢胞(aneurysmal bone cyst)は再発する可能性もあるため、線維性骨異形成症とともに引き続き経過観察を行っている。
病理組織学的所見:嚢胞性病変の病理組織像では、嚢胞壁内面には出血・ヘモジデリンの沈着、多核巨細胞を含む組織球浸潤を認め、裏層上皮はないことから、動脈瘤様骨嚢胞と診断した(図3a、c)。内面と反対側には辺縁にある線維性骨異形成症に類似した硬組織が存在し、二次性の動脈瘤様骨嚢胞と矛盾のない所見を認めた(図3b)。
解説:動 脈 瘤 様 骨 嚢胞は、Jaffe and Lichtenstein(1942)によって最初に報告され、四肢長管骨や脊椎に好発し、顎骨に発生することは稀とされる。動脈瘤様骨嚢胞は骨内に発生し、破骨細胞型巨細胞を含む線維性中隔によって分離され、血液で満たされた単嚢胞性または多嚢胞性の裏層上皮は認めない偽嚢胞である。CDH11および/またはUSP6遺伝子の再配列があることから、腫瘍性病変と考えるものもある。
 臨床的には、無痛性もしくは有痛性の膨隆として自覚されることが多い。X線写真では、境界明瞭は単房性、多房性、蜂窩状あるいは石けん泡状の透過性病変として認められ、MRI画像においてfluid-fluid levels(図2a・矢印)を示すことが特徴とされる。
 病理発生は、血管床の拡大による説や血管の破綻により生じた血腫の器質化や修復機転の異常など諸説あり、不明である。動脈瘤様骨嚢胞には一次性(原発性)に発生するものと、線維性骨異形成症、巨細胞腫、軟骨芽細胞腫、骨化性線維腫、良性骨芽細胞腫、セメント質骨などのさまざまな骨病変に関連する二次性(続発性)のものがあり、二次性動脈瘤様骨嚢胞にはCDH11およびUSP6遺伝子の再配列がないとの報告があることから、一次性と二次性で病変の成り立ちは異なる可能性がある。
 動脈瘤様骨嚢胞の治療は摘出掻爬術が一般的であるが、大きく破壊的な病変の場合は離断術などが必要な場合があるとされる。再発率は約10%とされる。

図3 病理組織像。a:HE x2、b:HE x10、c:
HEx20
図3 病理組織像。a:HE x2、b:HE x10、c:HEx20
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