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2022年06月号 「骨吸収を伴う表面滑沢な歯肉腫脹」
4.下顎骨原発骨肉腫

 悪性骨・軟部腫瘍は、全身の骨・関節および多くの軟部組織より発生する非上皮性悪性腫瘍である。American Cancer Society(アメリカがん協会)によると、原発性悪性骨腫瘍は全悪性腫瘍の約0.2%、原発性悪性軟部腫瘍は約1%程度と希少がん腫と位置づけられている1)。さらに、頭頸部原発骨肉腫は骨肉腫全体の10%以下と非常に稀である。
 原発性悪性骨腫瘍のうち骨肉腫やユーイング肉腫は10歳代の小児に好発するとされているが、頭頸部原発骨肉腫は30〜40歳代で高い傾向にある2)
 画像診断ではCTの有用性が報告されており、腫瘍内骨新生、溶骨性変化、骨膜性骨新生などを確認でき、PET/CTでも他の悪性腫瘍同様にFDG高集積が確認される。
 頭頸部原発骨肉腫の治療前の病理診断は重要であるが、細胞診では診断が困難なこともあり、生検組織診断が推奨されている。自験例でも穿刺吸引細胞診を行ったが確定診断には至らなかったため、組織採取を実施した経緯もあった。
 一般的に限局性高悪性骨・軟部腫瘍では、全身薬物療法と局所根治切除により完治率60〜70%、患肢温存率80%と報告されている。一方、頭頸部原発骨肉腫では根治手術が優先されるものの、断端陽性に対しては補助療法として放射線治療の有用性も報告されている3)
 予後については、頭頸部原発骨肉腫は解剖学的に安全域を維持できない症例も多く、四肢骨原発骨肉腫より局所再発率が高いとも報告されている。また、遠隔転移率は6〜20%と高くはないが、その多くは肺単独転移であり肺転移症例の5年生存率は10〜40%と著明に予後不良である4)
 自験例は右下顎骨原発骨肉腫の診断にて右下顎骨半側切除、選択的頸部郭清術、筋皮弁による再建を施行し、術後補助療法として薬物療法6コースを行った。術後約1年9ヵ月後に単発の肺転移を認めたため肺切除を行い、現在は無病生存である。


【参考文献】
  1. 1)American Cancer Society: Cancer Facts and figures 2010. Atlanta, Ga: American Cancer Society, 2010.
  2. 2)Vassiliou LV, Lalabekyan B, Jay, et al.: Head and Neck sarcomas: A single institute series. Oral Oncol, 65: 16-22, 2017.
  3. 3)Chen Y, Shen Q, et al.: Osteosarcoma of head and neck : A retrospective study on prognostic factors from a single institute database. Oral Oncol, 58: 1-7, 2016.
  4. 4)Ferrari S, Briccoli A, et al.: postrelapse suevival in osteosarcoma of the extremities: prognostic factors for long-term survival. J Clin Oncol, 21: 710-715, 2003.
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