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2022年06月号 「関節リウマチ患者に発現した口腔粘膜病変」
2.悪性リンパ腫

処置および経過:臨床検査にて、悪性リンパ腫の指標となるLDHおよび可溶性IL-2Rがそれぞれ262U/L、636U/mLと高値を示した。また生検にて、粘膜下に異型リンパ球の増殖がみられた(図3)。さらに免疫組織化学的検索を経て、Epstein-Barrウイルス(以下、EBV)陽性で、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)との確定診断が得られた。MTX服用歴より、MTX関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)として矛盾はしないと考えられた。骨髄穿刺検査にて骨髄浸潤は否定的であり、FDG-PETをはじめ全身検索でも口腔の他に異常はみられなかった。  MTXを休薬したところ潰瘍性病変はすみやかに縮小し、3ヵ月後には消失した(図4)。またLDH 169U/L、可溶性IL-2R 327U/mLと正常化し、自然寛解が得られたと判断した。その後腐骨除去術を実施し、ARONJも治癒が得られた。以後ARONJ、MTX-LPDのいずれも再発はない。
解説:MTXは抗リウマチ薬として広く用いられる免疫抑制薬であるが、MTX投与中のRA患者に悪性リンパ腫が発生したとする報告が相次ぎ、今日それはMTX-LPDとして認知されている。成因はおもに、EBVのB細胞への感染状態を基盤としてMTXによる免疫抑制がEBVを活性化し、B細胞を再賦活化や不死化させることで異常増殖を惹起することによると考えられている。
 病理組織型はDLBCLが最も多く、他のLPDよりも高率にEBVが関与するとされる。約半数が節外性に発生するが、口腔領域でもわが国で50例以上の報告がある。発生部位は歯肉が最も多く、疼痛や潰瘍形成を初発とすることが多い。なお、リンパ腫では慢性炎症巣においてサイトカインや活性酸素などが腫瘍発生促進的に作用するという考え方もあり、本例では先行するARONJに伴う慢性炎症の存在により、LPD発生が促進された可能性がある。
 MTX-LPDの最大の特徴は、MTXの投与中止により自然寛解が期待できる点にある。RAにおけるMTX診療ガイドラインにおいても、MTX-LPDが疑われた際には休薬することが推奨されており、それでも寛解しない場合、一般の悪性リンパ腫に準じた化学療法の適応となる。
 RA患者が一般歯科外来を受診する機会は増えていると思われるが、口腔粘膜の変化が比較的急速に生じた場合はMTX-LPDを念頭に置く必要がある。

図3
図3 粘膜下に中〜大型の異型リンパ球の増殖がみられる(HE染色、×400) 
図4
図4 頬粘膜の潰瘍性病変は肉眼的に消失した
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