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2022年05月号 「軟口蓋の白斑と粗造感」
2.白板症

診断のポイント:口腔カンジダ症は、白苔が擦過により剥離できることから鑑別される。口腔扁平苔癬は両側性に発症しやすく、発赤を伴う場合には接触痛などの疼痛を伴い、周辺部の白斑もレース状のことが多い。紅板症は病変の大部分が鮮紅色でビロード状を呈し、多くは疼痛を伴う。本例ではもともと白斑が存在し、そこに紅斑が混在してきたという臨床経過から、紅斑混在型の白板症と臨床診断される。
経過:局所麻酔下に生検を行った。生検標本では上皮の基底側から中層をやや越えて異型細胞の増殖がみられ、一部では上皮のほぼ全層に異型細胞を認め、高度上皮異形成あるいは上皮内がんと診断された(図2)。そのため、糖尿病管理のもとに、全身麻酔下にルゴール不染域を含めて約3mmの安全域を設けて病変の全切除を行った。切除創面には吸収性縫合補強材をフィブリン糊で貼付・固定した。手術標本では、病変中心部において細胞異形が生検標本よりやや増強しており、病理学的に上皮内がんと診断された。術後1年が経過した現在、再発、転移および機能障害なく経過している(図3)。
 白板症は臨床的に擦過によって除去できない白色の斑状あるいは板状の病変で、病理組織学的に上皮性異形成の有無にかかわらず、他のいかなる疾患にも分類されないものとされている。臨床視診型は平坦型、波状型、ヒダ状型および軽石状型からなる均一型と、疣贅型、結節型、潰瘍型および紅斑型からなる非均一型に分類される。
 本疾患は潜在的悪性疾患の代表的な病変の1つであり、組織学的に上皮性異形成、上皮内がん、扁平上皮がんが認められることがあるため、生検による病理診断が必要である。口腔粘膜の上皮性異形成は、その程度により軽度、中等度、高度に分類され、異形成が高度なものほどがん化率は高くなり、がん化しやすい中等度あるいは高度異形成は非均一型に多い。
 治療は生検結果により決定される。異形成のないものや軽度異形成の病変に対しては経過観察が行われる場合もあるが、中等度以上の異形成が認められる症例では病変の切除が行われる。切除に際してはルゴール染色を行い、その不染域を含めて3mm程度の安全域を設けて切除することが推奨される。

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図2 生検標本の病理組織像(HE染色、×100)
図2 生検標本の病理組織像(HE染色、×100)
図3 術後3ヵ月経過時の口腔内写真
図3 術後3ヵ月経過時の口腔内写真

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