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2022年04月号 「顎骨内の透過性病変」
3.扁平歯原性腫瘍

処置および経過:全身麻酔下にて、腫瘍摘出術を施行した。左側下顎大臼歯部頬歯肉より粘膜骨膜弁を剥離し、骨削合すると、充実性の組織がみられた。腫瘍は単胞性であり、周囲組織との剥離は容易であった(図4)。腫瘍を摘出し、ld8については抜歯を行った。術後創部治癒は良好であり、現在術後1年を経過したが再発は認めていない。
病理組織学的所見:部分的に比較的軽度な炎症反応を伴う、線維性壁を認めた。裏打ちの上皮は扁平から立方形であり、壁内には上皮島が散在してみられた。しかし、それらの上皮島の上皮胞巣辺縁には細胞の柵状配列はみられず、腫瘍細胞に異型性は認めなかった(図5)。
病理組織学的診断:扁平歯原性腫瘍


 扁平歯原性腫瘍の発育は、一般的に緩慢で、臨床症状としては歯の動揺や歯肉の腫脹、骨様膨隆などの症状を認めることもあるが、本症例のようにX線撮影により偶然発見されることが多い。画像所見としては、単胞性のX線透過像と病変周辺の明瞭な骨硬化像を特徴とし、歯根吸収を認めることは稀とされている。比較的小さな病変では、初期診断において歯周炎や嚢胞と診断されることが多く、病理組織学的診断にて判明することが多い。
 一方、比較的大きな病変では局所浸潤性に発育し、時に多房性を示すものを認めることもある。また、広範な骨吸収を認めるものは、時に浮遊歯のような画像所見により、エナメル上皮腫や悪性腫瘍が疑われることもある。
 病理組織学的な特徴としては、高度に分化した扁平上皮からなる大小多数の索状を呈する腫瘍胞巣を認め、棘細胞型や類腱型のエナメル上皮腫に類似している。しかし、扁平歯原性腫瘍の胞巣の最外層は立方あるいは扁平な上皮細胞からなり、エナメル上皮腫にみられるような円柱上皮細胞の柵状配列は認めず、エナメル髄様構造も認めないことから、鑑別は比較的容易とされている。
 治療法については、掻爬や腫瘍摘出、あるいは局所的切除といった保存的外科処置で十分とされている。ただし、大きな腫瘍の場合は、臨床診断においてエナメル上皮腫や悪性腫瘍が疑われることもあり、顎骨切除を伴うような根治的な拡大切除が施行されている報告例も散見されるため、慎重に診断する必要がある。

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図4 術中
図4 術中
図5 病理組織写真
図5 病理組織写真

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