歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド

歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド
Top診断力てすと > 2022年3月号「小児の繰り返す頬部の腫脹」

診断力てすと診断力てすと

2022年03月号 「小児の繰り返す頬部の腫脹」
3.頬骨骨髄炎

診断:局所的には頬骨骨髄炎。全身的には慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO:表1)。
処置および経過:炎症マーカーが高値であり、発熱、疼痛、発赤を認め、また、MRI所見から骨髄炎と診断した。抗菌薬を投与し、26病日目に解熱し、37病日目に退院となった。
 しかし、55病日目に再度発熱し、両側頬部の発赤腫張を認め、再入院。抗菌薬を投与するも、微熱は継続した。FDG-PET検査を施行したところ、顔面骨以外に、距骨にも集積を認め、骨生検により骨髄炎と判明した(図5)。この間、血液培養検査はすべて陰性であった。以上の経過より、慢性再発性多発性骨髄炎と診断された。NSAIDsおよびビスホスホネート(BP)製剤の使用により、軽快した。
 慢性再発性多発性骨髄炎は、小児期に好発する全身性の非細菌性骨髄炎であり、広義の自己炎症性疾患(図6、7)に分類される。
 一般に顎骨骨髄炎は歯性感染など細菌感染因子が多いが、時に非感染性病因も存在することを念頭に置き、対応することが重要である。

【参考文献】
  1. 1)八角高裕:4.慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO).日本臨牀,76(10):1881-1886,2018.
  2. 2)M F McDermott, et al.: Germline mutations in the extracellular domains of the 55 kDa TNF receptor, TNFR1, define a family of dominantly inherited autoinflammatory syndromes. Cell, 97(1): 133-144, 1999.
  3. 3)伊藤秀一:2.自己炎症性疾患総論:臨床診断のための疾患概念と症状の理解;遺伝子診断の前に.日本臨牀,76(10):1713-1723,2018.
歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド
表(1) 慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)(参考文献1)より引用改変)
病態 IL-1βの活性化酵素(インフラマソーム)の遺伝的な異常が推察されているが、詳細は未解明。SAPHO症候群との関連が示唆
診断 診断基準は未確立。他疾患(感染症・悪性疾患)の除外により診断。骨生検は実施すべき   
治療 治療方針は未確立。第1選択はNSAIDs、追加治療としてBP製剤を考慮
予後 長期予後は一般的に良好。一部の症例では、四肢の変形が起こり外科的治療が必要になることが報告
臨床 発症頻度は100万人に1人。10歳前後の女児に多い。大腿骨など長管骨に好発。特異的な血液・画像・組織検査所見はなし
図5 FDG-PET写真(距骨部)
図5 FDG-PET写真(距骨部)

1999年、Kastner2)によって提唱された比較的新しい疾患概念。原因不明の周期性発熱、全身性の炎症を特徴とする。
・誘因があきらかではない炎症所見
・自己抗体や自己反応性T細胞が存在しない
・先天的な自然免疫系の異常による

図6 自己炎症性疾患

・自己免疫性疾患:獲得免疫系の異常
 全身性エリテマトーデス、関節リウマチなど
自己炎症性疾患:自然免疫系の異常
狭義:遺伝子異常と病態との関連が認められる。家族性地中海熱、クリオピリン関連周期熱症候群など
広義:責任遺伝子が同定されていない。
ベーチェット病、慢性再発性多発性骨髄炎など

図7 自己免疫性疾患と自己炎症性疾患3)

<<一覧へ戻る
歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド
歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド