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2022年02月号 「口唇・口腔内のびらん」
4.尋常性天疱瘡

原因:不明。ヘルペスウイルス感染を伴う尋常性天疱瘡例の多さから、天疱瘡の罹患もしくは悪化に対するHSV1、HSV2、HHV2の関与も考察されているが、判然としない。
病態:上皮細胞間接着因子デスモグレインに対するIgG自己抗体により、皮膚や粘膜にびらんを生じる自己免疫性水疱症。
一般的な症状:天疱瘡は尋常性と落葉状がある。尋常性はおもに粘膜に症状を来すが、粘膜皮膚型では大量の水分喪失、感染合併を来して重症化することもある。
診断:尋常性天疱瘡(ヘルペスウイルス感染を伴う)。
 口唇に症状が出ており、血液検査でもHSV抗体が高値であり、一見するとHSV(単純ヘルペスウイルス)1型の感染による単純ヘルペス性歯肉口内炎が疑われる。HSVには口唇、顔面などの上半身に発症する1型と、おもに性器を中心とする下半身に発症する2型がある。以前は、ほとんどの人が子どものうちに家族から口唇ヘルペスに感染していたが、現在では成人になってから初感染し、発熱を伴って広範囲に5mm程度の水疱が多発して、ヘルペス性歯肉口内炎となる人もいる。通常は2〜3週間で症状が治まるが、ウイルスは神経節に潜んで、疲労やストレスなどの免疫力の低下に伴って再活性化する。
 帯状疱疹の場合は、左右別の三叉神経支配領域に沿った水泡形成が特徴的であるが、両側の口唇、口腔粘膜にびらんが出現している点で異なる。
 この症例の場合、2ヵ月程度口唇や口腔粘膜の症状が持続して難治性であり、右背部と左大腿部皮膚にも水疱があり、HSV感染のみではない可能性に気づく必要がある。
 ニコルスキー現象は著明ではなかったが、血液検査で抗デスモグレイン3抗体が1,000以上であり、口腔粘膜と背部皮膚の組織生検で基底層直上棘融解、上皮内水疱が認められ、直接蛍光抗体法でも上皮細胞間にIgGの沈着が認められた。HSV感染を思わせる多核巨細胞も認められた。抗デスモグレイン1抗体は11.7であり、粘膜優位型尋常性天疱瘡と考えられ、皮膚症状のみの落葉状天疱瘡は除外される(図3、表2)。
治療:自己抗体の産生と働きを抑える免疫抑制療法として、ステロイド内服、免疫抑制剤併用、血漿交換療法、大量免疫グロブリン療法、ステロイドパルス療法など。

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図3 口腔粘膜の病理組織像
図3 口腔粘膜の病理組織像

表(2) 血液検査➁

抗デスモグレイン1抗体 11.7
抗デスモグレイン3抗体 1,000以上
抗BP180抗体 3.0未満
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