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2021年12月号 「根管治療で改善しない歯肉の腫れ」
4.悪性リンパ腫

臨床経過:MR画像にて上顎骨と一塊の40×20mm大の腫瘤性病変を認めたため(図3)、 上顎歯肉腫瘍の臨床診断にて組織生検を行った。その結果、非ホジキンリンパ腫と診断された。血液内科に対診依頼し、化学療法(CHOP療法)と放射線治療の併用療法により完治した。
考察:悪性リンパ腫は白血球の中のリンパ球が癌化した悪性腫瘍で、日本人の場合は大半が非ホジキンリンパ腫である。その由来、組織の性質から身体のいかなる部位にも発症する可能性がある。
 本症例のようにリンパ節以外の臓器に発生した場合は、節外性リンパ腫といわれる。節外性リンパ腫の発生頻度は50%程度であるが、口腔内の発生頻度は2%程度と報告されている。顎口腔領域における悪性リンパ腫の好発部位は歯肉歯槽部、顎骨、上顎洞、唾液腺の順に多く、なかでも歯肉歯槽部に多く発生すると報告されている。口腔領域の悪性リンパ腫は、臨床症状として無痛性のび漫性腫脹や腫瘤の形成がみられることが多いが、特有の臨床症状に乏しく、炎症性疾患に類似する症状を呈することが多いため、診断において困難を来すことが報告されている。
 また、本症例のように病変部に壊死を伴うことは稀である。本症例ではたまたま病変がブリッジのポンティック下で発生したため、腫瘤が増大した際にポンティックに挟み込まれ血流障害が生じ、壊死したと考えられる。悪性リンパ腫が歯肉歯槽部に生じた場合には、初発症状が感染症様症状で始まった際に歯科を最初に訪れる可能性は高い。
 例題の臨床経過ならびに臨床所見のみでは@〜Cのすべての選択肢の可能性が考えられ、本症例のように病巣部位に根尖性歯周炎が認められた場合には、歯性感染症と診断し、根管治療および消炎治療が第1選択となるのはやむを得ないと思われる。
 しかし、治療の予後が不良であったり不自然な経過を辿るようであれば、本疾患を念頭に入れておく必要性がある。

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図3 初診時のMR画像
図3 初診時のMR画像

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