A | 1.歯原性角化嚢胞 |
歯原性角化嚢胞(odontogenic keratocyst:OKC)は、2005年のWHO分類で良性腫瘍として、角化嚢胞性歯原性腫瘍(keratocystic odontogenic tumor:KCOT)の名称で扱われていたが、2017年のWHO分類以降、再び嚢胞として分類され、歯原性角化嚢胞の名称に再度修正された。
本疾患は10〜30代に多く、男女比は1.5:1との報告がある。顎骨中心性に発生し、上顎より下顎に多く、大臼歯部から下顎枝に好発する。
顎骨の膨隆を訴えて来院する症例は比較的少なく、主訴の多くは歯科治療時のX線検査で偶然発見されたり、二次感染による疼痛や腫脹である。嚢胞の内容物は白色粥状やオカラ状の角化物を含んでいることが多い。
画像所見では単房性が約75%、多房性が約25%で、境界明瞭な透過像を呈する。臨床所見はエナメル上皮腫と共通することが多いが、隣接する歯根の著明な吸収は少ない。被膜は薄く、嚢胞壁内に娘嚢胞や小上皮塊が存在することもあり、これが再発の原因とされる。
摘出後の再発が多いとの理由から、顎骨の辺縁切除または区域切除が適応されたこともあったが、現在では保存的な縮小手術が適応されることが多い。再発率は13〜26%、術後5年以内の報告が多く、その70%がX線画像において最大径が40o以上の症例であったとの報告がある。
自験例は局麻下に生検を施行し、OKCの病理組織学的診断を得た。生検時に開窓術も併施しており、開窓腔より局所洗浄を行い嚢胞の縮小を待ってから摘出し、一定の期間経過後に病変の残存の有無を含めた瘢痕組織の反復摘出を行った。術後も定期的な画像検査を中心に長期的な経過観察を行っていく必要がある。
- 1)内山健志,大関 悟(監著),近藤壽郎,坂下英明,片倉 朗(編著):カラーアトラス サクシンクト口腔外科学 第4版.学建書院,東京,2019.
- 2))栗田賢一,覚道健治,柴田考典,又賀 泉,久保田英朗(編):第4版 SIMPLE TEXT 口腔外科の疾患と治療.永末書店,京都,2016.
- 3)榎本昭二,道 健一,天笠光雄,小村 健(監):最新口腔外科学 第5版 Oral and Maxillofacial Surgery.医歯薬出版,東京,2017.
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