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2021年11月号 「緩徐に進行した開口制限」
4.咀嚼筋腱・腱膜過形成症

 咀嚼筋腱・腱膜過形成症は比較的新しい疾患概念で、側頭筋や咬筋といった咀嚼筋の腱・腱膜が両側性に過形成することで咀嚼筋の進展が抑制され、開口が制限される。開口制限は突然に生じるものではなく、緩徐に進行する。咀嚼筋腱・腱膜過形成症は筋突起の肥厚が認められるため、筋突起過形成症の亜型とされていたこともあったが、現在では筋突起過形成症とは別の疾患と考えられている。発症要因に関しては不明な点が多い。
 診断に必要な臨床像として、開口制限が緩徐に進行していること、開口制限の割に前方や側方への動きが制限されていないこと、最大開口時に左右の咬筋前縁に相当する部分を触診すると縦方向に腱・腱膜による硬い索状物を触知すること、MRIで咬筋や側頭筋に腱膜の過形成がみられることが挙げられる。さらに、CTで筋突起の肥厚や咬筋の肥大が認められる。下顎角部の肥大に伴いSquare mandible という下顎角に張りのある顔貌を認めることもある。
 治療は手術と術後の開口訓練である。手術は全身麻酔下に口腔内からアプローチして咬筋の過形成した腱・腱膜を切除し、側頭筋腱の過形成に対しては筋突起切除で対応する(図3)。術中に開口量が増加しても、術後に開口訓練をしないと開口量の改善は得られないため、万能開口器などの器具を用いて積極的に開口訓練を行う。術後の開口訓練は手術と同様に重要であるが、開口訓練は痛みを伴うため鎮痛剤を内服させて行い、退院後も長期にわたって開口量の改善と維持のために自己開口訓練を行うよう指示する(図4)。

【参考文献】
  1. 1)覚道健治,依田哲也:Square mandibleを伴う新概念の開口障害:咀嚼筋腱・腱膜過形成症の病態と治療.日本顎関節学会雑誌,21(1):28-30,2009.
  

図3 術後のパノラマX線写真。左右筋突起の切除後

図4 同、自力の開口量は42mm

 


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