A | 3.帯状疱疹 |
原因:帯状疱疹は、体内に過去の水痘感染以降に潜伏感染している水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化が原因であり、他人から感染して発症することはない。しかし、水痘に罹患したことがない人物には、接触感染などで水痘として感染するおそれがある。
病態:一度水痘に罹患すると、たとえ治癒しても水痘のウイルスが神経節中に潜伏感染する。ストレス、老齢、化学療法などにより免疫力が低下し、ウイルスが神経細胞を取り囲んでいるサテライト細胞の中で再度増殖することによって生じるのが帯状疱疹である。
60歳台を中心に50歳台から70歳台に多くみられるが、過労やストレスが引き金で若年者に発症することもある。
一般的な症状としては知覚神経の走行に一致して、皮疹出現の数日前から違和感や疼痛が出現することが多い。その後、一般に帯状に紅色丘疹・浮腫性紅斑・紅暈を伴う小水疱が列序性に出現し、疼痛や掻痒感を伴う。
一般に帯状疱疹は予後良好とされているが、高齢者や免疫不全者ではウイルス性髄膜炎などを継発し、重症となる場合もある。
診断:血液や水疱内容液のウイルス価を測定することで容易に診断可能だが、結果が出るまでに時間がかかることから、日常臨床では臨床所見から臨床診断し、治療に移行することが多い。
治療:アシクロビルなどの抗ウイルス薬が有効で、点滴や内服による治療により治癒までの期間短縮が期待できる。ただし、抗ウイルス薬は水痘・帯状疱疹ウイルスの増殖抑制効果のみを有するため、症状出現後72時間以内に投与しないと効果が期待できない。よって、病初期以外は症状を緩和する対症療法が主となる(鎮痛目的でアセトアミノフェン、口腔症状緩和目的にアズレン系含漱剤など)。
また、他のウイルス感染症同様に十分な休養、安静、栄養補給も重要である。
補足:帯状疱疹が治癒したにもかかわらず、症状出現部位に神経痛様症状が出現することがある。これを帯状疱疹後神経痛という。高齢者に多く出現するとされ、全帯状疱疹の約30%で出現するとされている。治療はプレガバリンなどの内服が主だが、重症例では神経ブロックを施行する場合もある。
処置および経過:初診時にウイルス価を測定したが、結果が判明するまで時間がかかるため、臨床所見から帯状疱疹と診断した。抗ウイルス薬は症状出現後72時間以内に投与する必要があるため、腎機能を確認後バラシクロビル塩酸塩3,000mg分3およびアセトアミノフェン1,500mg分3を処方した。
1週間後に症状は軽快し、術後の疼痛もなく経過は良好である。
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