2021年09月号 「硬口蓋に発生した腫瘤性病変」
池田哲也 Tetsuya IKEDA
杏林大学医学部付属病院 顎口腔外科 〒181-8611 東京都三鷹市新川6-20-2
図1 初診時の口腔内写真。左硬口蓋中央部に腫瘤性病変を認める
図2 同、パノラマX線写真。は無髄歯と思われる
図3 同、造影CT(*:鼻口蓋管嚢胞/矢印:腫瘤性病変)
図4 同、単純CT(*:鼻口蓋管嚢胞)
患者: | 80代前半、女性 |
主訴: | 左硬口蓋の腫瘤 |
既往歴: | 腎結石 |
現病歴: | 患者は202X年某月某日、他の診療科において全身麻酔下で手術を受けるため、周術期管理センターを受診した。当院では、歯科医師または歯科衛生士により、すべての全身麻酔症例の口腔評価を同センターにおいて行っている。その際に、左硬口蓋の腫瘤性病変を指摘し、精査を提案したところ希望したため、他科での手術加療後に改めて当科を受診した。問診によると5年ほど前から硬口蓋の隆起については自覚していたが、無痛性のため放置していたとのことであった。 |
現症: | |
口腔外所見; | 栄養状態は良好で、顔貌に異常所見は認められなかった。 |
口腔内所見; | 根尖相当部の硬口蓋粘膜に、直径10mmほどの隆起性病変が診られたが、排膿などあきらかな感染所見は認められなかった(図1)。病変に硬結はなく、軟性で圧痛も認められなかった。 |
画像所見; | パノラマX線写真ではおよびに根管治療が施されていたが、やや不完全な所見を呈していた(図2)。造影CTで、左硬口蓋粘膜下に直径12oほどの楕円形軟部腫瘤を認めた。辺縁および内部に軽度の造影効果を有していた(図3)。また、単純CTでは、腫瘤と接する皮質骨にあきらかな骨破壊は認められなかった(図4)。さらに、今回の腫瘤性病変との関連性はないが、鼻口蓋管嚢胞がCTにて確認できる(図3、4)。 |
Q | 最も疑われる疾患名は? |
1.多形腺腫 | |
2.根尖性歯周炎起因内歯瘻 | |
3.悪性リンパ腫 | |
4.粘表皮がん | |
5.腺様嚢胞がん |