歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド

歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド
Top診断力てすと > 2021年7月号「多発性のアフタ性口内炎」

診断力てすと診断力てすと

2021年07月号 「多発性のアフタ性口内炎」
3.クローン病

臨床経過:既往からクローン病の口腔病変を疑い内科へ対診したが、消化器症状はなく、寛解状態であるため否定的であると診断された。ヘルペス性口内炎を疑い抗ウイルス薬の投与を行ったが改善なく、その後も短期間に増悪を繰り返すため(図3)、上部消化管内視鏡検査を行ったところ、咽喉頭や上下食道に多発性のアフタを認めた(図4)。クローン病の再燃による口腔、咽喉頭、食道のアフタと診断され、インフリキシマブ(抗TNF-α抗体)およびステロイドの全身投与が開始され、以後症状は軽快した。
考察:再発性アフタは日常診療で高頻度に遭遇する口腔粘膜疾患であるが、ベーチェット病やPFAPA症候群、フェルティ症候群、周期性好中球減少症、クローン病、ライター病、HIVなどの全身疾患の部分症状として口腔内に発現することがある。
 クローン病は回腸末端部に好発する潰瘍や、線維化を伴う肉芽腫性炎症性病変であり、近年増加傾向である。病変は非連続性で、口腔から肛門までの消化管のあらゆる部位に起こり得る。好発年齢は10代後半から20代で、性差は約2:1で男性に多い。発症原因は不明であるが、遺伝的因子、環境因子(ウイルスや細菌感染、腸内細菌叢の変化、食餌性抗原など)などが複雑に関与し、免疫系の異常が生じると考えられている。
 症状は腹痛、下痢、体重減少、発熱、肛門病変などである。腸管外合併症としては貧血、末梢関節痛・炎、強直性脊椎炎、口腔内アフタ、皮膚症状、虹彩炎、成長障害などがある。治療は内科的治療(薬物治療、栄養療法)と外科的治療があり、薬物療法としてステロイド、5-アミノサリチル酸、免疫調節薬(アザチオプリン、6-MP)、抗TNF-α抗体(インフリキシマブ、アダリムマブ)などがある。
 口腔内アフタはクローン病の4〜14%に合併し、小児ではより高率(48〜80%)に発症するといわれている。多くは腸病変と同時期に発症するが、腸病変に先行するものも30〜60%あるとされ、本疾患の診断上重要な先駆症状である。
 再発性アフタは全身疾患に関連している場合があることを念頭に置き、口腔内所見だけでなく全身症状の把握に努めるとともに、医科への対診を適切に行うことが望まれる。

図3 再燃時の口腔内写真
図3 再燃時の口腔内写真
図4 上部消化管内視鏡写真
図4 上部消化管内視鏡写真

<<一覧へ戻る
歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド
歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド