2021年6月号 「口腔内・頭部・耳前部の痛み」
| Ａ | 3．側頭骨腫瘍 |
診断：左肺腺がん（Stage IV）、多発骨転移（左側頭骨、右恥骨）、両副腎転移。
本症例は、肺がんの側頭骨転移症例である。紹介元の耳鼻科からは顎関節症の疑いにて精査加療の依頼であったが、当科初診時の所見より、耳下腺疾患と顎関節疾患はいずれも否定的と考えた。血液所見および側頭部の自発痛が続くことから巨細胞性動脈炎を疑い、総合内科に対診依頼を行ったところ、全身CT撮影により肺がんとその多発骨転移が判明した（図３～６）。病理検査では、胸水のセルブロックより腺がんの診断となった。
また、頭部皮膚腫瘤の生検においても、腺がんの病理組織診断を得た。呼吸器内科にて入院加療が行われたが、その後不幸な転帰を辿ることとなった。
顎関節付近の痛みや開口障害は、最初に歯科医院を受診する可能性が高い。顎関節疾患以外にも、前述の選択肢のようなさまざまな疾患があることに留意し、診断がつかなければ、病院歯科口腔外科や他科に対診依頼を行うことが重要である。
