歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド

歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド
Top診断力てすと > 2021年2月号「下顎前歯部の透過性病変」

診断力てすと  診断力てすと

2021年2月号 「下顎前歯部の透過性病変」
4.中心性歯原性線維腫

 本症例では歯原性腫瘍を疑い生検を行ったところ、歯原性線維腫との診断を得た。歯原性線維腫は、中胚葉組織である歯小嚢や歯根膜に由来する間葉系良性腫瘍で、顎骨内に生じる中心性歯原性線維腫と、外骨性に生じる周辺性歯原性線維腫に分類される。病理組織学的には、生物学的活性が低い歯原性上皮を散在性に含む線維性組織の増生から成り、比較的発生頻度の低い稀な疾患である1〜3)
 本腫瘍はX線検査を行った際に偶然発見されることが多いが、特異的なX線所見に乏しく、他の顎骨内腫瘍性病変や嚢胞性病変との画像診断での鑑別は困難とされている4)。そのため、診断および治療方針立案には、生検による病理組織学的診断が必須となる。本症例でも病理組織像で特徴的な所見が確認され、免疫組織化学染色でも歯原性上皮胞巣が陽性を示したことより診断に至った(図4、5)。
中心性歯原性線維腫は10〜30歳代の若年者に比較的多く、性差はなく、発育は緩慢で、無痛性、無症状に進行することが多い5)とされている。発生部位は下顎臼歯部に多く5)、本症例のように下顎前歯部に認められる症例は比較的稀である。
 歯原性線維腫の治療法は、腫瘍関連歯の抜歯と、腫瘍の摘出および掻爬が推奨されている。本症例でもru32の抜歯および顎骨腫瘍摘出術を施行した(図6)。病変は灰白色で充実性、大きさは10×17mmであった。術前X線所見では判然としなかったものの、ru32歯根の隣接面にはわずかな吸収が認められた(図7)。現在まで経過は良好であるが、頻度は少ないものの再発例が報告されていることから、長期間の経過観察が必要と考えられる。

【参考文献】
  1. 1)Daskala I, Kalyvas D, et al.: Central odontogenic fibroma of the mandible: a case report. J Oral Sci, 51: 457-461, 2009.
  2. 2)Shiraishi T, Uehara M, et al.: A case of central odontogenic fibroma in a pediatric patient: Mandibular reconstruction with parietal bone. J Oral Maxillofac Surg Med and Pathol, 27: 361-365, 2015.
  3. 3)Santoro A, Pannone G, et al.: Central odontogenic fibroma of the mandible: A case report with diagnostic considerations. Ann Med Surg(Lond), 5: 14-18, 2016.
  4. 4)Kaffe I, Buchner A: Radiologic features of central odontogenic fibroma. Oral Surg Oral Med Oral Pathol, 78: 811-818, 1994.
  5. 5)Calvo N, Alonso D, et al.: Central odontogenic fibro- ma granular cell variant: A case report and review of the literature. J Oral Maxillofac Surg, 60: 1192-1194, 2002.
図4 病理組織像(H-E染色)
図4 病理組織像(H-E染色)
図5 免疫染色像(AE1/AE3)
図5 免疫染色像(AE1/AE3)

図6 術中写真
図6 術中写真
図7 摘出標本
図7 摘出標本

歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド
<<一覧へ戻る
歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド
歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド