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2021年02月号 「上顎臼歯部義歯床下歯槽頂粘膜の紅斑」
1.歯肉癌

経過:前医にてステロイド軟膏が処方され、約1ヵ月間にわたり経過観察が行われていたが、改善が得られなかったことから単純な褥瘡性潰瘍ではなく腫瘍性疾患を疑い、局所麻酔下に生検を施行した。病理組織学的に扁平上皮癌の診断を得たため、各種画像検査(MRI、FDG-PET/CT:図3)を施行してステージングを行い、左側上顎歯肉扁平上皮癌(cT2N0M0)と診断した。生検組織像(内向性で浸潤傾向が強い、YK3C)、年齢、基礎疾患を考慮し、全身麻酔下で左側上顎骨部分切除術および予防的な肩甲舌骨筋上頸部郭清術を施行した。
 手術検体の病理組織所見では、びらん部に角化を伴う扁平上皮癌細胞の浸潤を認めたが顎骨浸潤はなく(図4)、頸部リンパ節に転移も認められなかった。最終診断は左側上顎高分化型扁平上皮癌(pT2N0M0)であり、現在、外来通院にて経過観察中である。
鑑別すべき疾患:口腔粘膜に紅斑やびらん、潰瘍を呈する疾患は多彩であり、扁平苔癬や紅板症、義歯不適による褥瘡性潰瘍、紅斑性(萎縮性)カンジダ症、天疱瘡、類天疱瘡、全身性エリテマトーデス、多形滲出性紅斑などが挙げられる。臨床所見が重要であるが、確定診断には血液検査や真菌培養検査、病理組織学的検査(生検)などを総合的に検討し診断する必要がある。
 本症例は、臨床所見からはまず紅板症と診断するのが妥当であると思われるが、紅板症は臨床病名であり、組織学的には種々の病変や病態、時に扁平上皮癌を含む疾患であることを認識しなければならない。また、義歯床下の粘膜に病変がみられた場合は、義歯性潰瘍やカンジダ症などとの鑑別も必要になる。
 本症例の鑑別のポイントは、病変がやや陥凹していることであり、腫瘍性疾患の可能性が高いと考えなければならない。紅板症の癌化率は40〜50%と報告されていることが多いが、上述のごとく臨床診断時すでに悪性腫瘍病変を含んでいることが多いため、生検により病理組織学的診断を下したうえでその組織像、病態に応じて、ただちに適切な外科的対応をとることが望ましい。

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図3 術前のFDG-PET/CT画像
図3 術前のFDG-PET/CT画像
図4 病理組織写真(H-E染色×100)
図4 病理組織写真(H-E染色×100)

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