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2021年1月号 「歯肉の難治性潰瘍」
3.リンパ増殖性疾患

 臨床所見から歯肉癌を疑い、組織生検を行った。病理組織学的所見(図4)では潰瘍形成を認め、高度の炎症性細胞の浸潤と異型細胞の増殖を認めたが、扁平上皮癌の診断にいたらなかった。免疫染色を追加したところ、CD20、EBER陽性であることから、EBV陽性び漫性大細胞型B細胞悪性リンパ腫(DLBCL)の診断を得た。MTX内服中であることから、メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)を疑い、当院内科と処方医に対診し、MTXを休薬した。
 初診時口蓋側歯肉に認めた骨露出は、休薬1ヵ月後には上皮化が進み(図5)、骨露出範囲の縮小を認めた。休薬3ヵ月後にru432の抜歯を行ったが、上皮化が進み骨露出は消失した(図6)。
 MTX-LPDは、RAの治療薬でもあるMTXを投与された患者に発生するリンパ増殖性の疾患であり、RAにおけるMTX診療ガイドラインにおいて重篤な副作用の一つとして挙げられている。発生機序はいまだ解明されていないが、RAにおける免疫異常、MTXによる免疫抑制効果が発生に関与していると考えられている。また、報告例の多くはEBV陽性であるため、EBV感染の関与も示唆されている。口腔領域では、歯肉に発生した報告例が圧倒的に多く、臨床症状としては潰瘍や骨露出を認める。
 治療方針としては、MTXの休薬が第一選択である。休薬後2週間の経過観察を行い、寛解した場合は経過観察を継続する。休薬で寛解しない場合や再発例では、悪性リンパ腫に準じた化学療法を行うことが勧められており、処方医や他科との連携が必要である。

a:HE×400
a:HE×400
b:CD20×400
b:CD20×400
c:EBER×400
c:EBER×400




図4 a〜c 
病理組織学的所見

図5 休薬1ヵ月後
図5 休薬1ヵ月後
図6 休薬3ヵ月後
図6 休薬3ヵ月後

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