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2020年11月号 「下顎の腫脹」
2.悪性リンパ腫

診断のポイント:症状および画像所見より腫瘍性疾患が考えられる。骨の浸潤破壊像を認めることより、悪性腫瘍が最も疑われる。潰瘍などの所見はないが、腫瘤を伴う腫脹を認める。また、臨床経過が長いため、炎症性疾患より継発し、比較的頭頸部領域に好発する悪性リンパ腫の臨床診断となった。
処置および経過:腫瘍性疾患の疑いにて、一部生検を施行した。病理組織学的に悪性リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫:DLBCL)の診断を得る(図5)。当院血液内科へ紹介となり、化学療法および放射線療法の治療方針となった。ld4は放射線照射前に抜歯した。治療後の経過は良好で、2年以上経過した現在でも再発は認められず、経過は良好である(図6)。
考察:2016年のWHO分類では、Hodgkinリンパ腫と非Hodgkinリンパ腫(B細胞リンパ腫、T/NK細胞リンパ腫)に大別される。さらに各々細分化され、70種類以上の疾患単位に分類される。非Hodgkinリンパ腫で代表的なものは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。
 悪性リンパ腫は臨床症状が多彩であり、特徴的な臨床所見が少なく、本症と診断することは非常に困難である。病理組織学的検査においても、数回の生検にて炎症と診断された後、本症と診断されることも多い。今回の症例では一回の生検にて確定診断を得ることができ、スムーズに治療へ移行することができたが、臨床診断に際しては、先入観に囚われずつねに悪性腫瘍を疑う慎重な姿勢が重要である。
 慢性骨髄炎に合併する悪性腫瘍としては扁平上皮がんが最も多く、線維肉腫、骨髄腫、悪性リンパ腫などが報告されている。今回の症例においても、慢性炎症が悪性リンパ腫の発生に関与した可能性が強く考えられる。

【参考文献】
  1. 1)佐藤春樹,高木雄基,他:広範な下顎骨壊死を伴った加齢性EBV陽性びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の1例.口腔腫瘍,25:213-219,2013.
  2. 2)宮崎幸政,菊池直士,他:慢性骨髄炎治療後に悪性リンパ腫を発生した1例.整形外科と災害外科,55:200-204,2006.
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図5 病理組織像:大型不整形核をもつ異型細胞がびまん性に増殖している。B細胞マーカー(CD20・Pax5)陽性、T細胞マーカー(CD3)陰性。他、CD10陰性、CD5陰性、Ki67:60%
図5 病理組織像:大型不整形核をもつ異型細胞がびまん性に増殖している。B細胞マーカー(CD20・Pax5)陽性、T細胞マーカー(CD3)陰性。他、CD10陰性、CD5陰性、Ki67:60%
図6 治療後の顔貌・口腔内所見。オトガイ部および下顎歯肉部の腫脹は消失した
図6 治療後の顔貌・口腔内所見。オトガイ部および下顎歯肉部の腫脹は消失した

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