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2020年10月号 「左側顔面の疼痛」
2.三叉神経痛

 国際頭痛分類第3版(ICHD-3)では、三叉神経痛(Trigeminal neuralgia:以下、TN)は典型的TN、二次性TN、特発性TNに分類されている。典型的TNならびに特発性TNは、50歳以上で発症することが多い。疼痛発作は、トリガーゾーンと呼ばれる発作誘発部位への軽度な接触で誘発される。日常生活では、洗顔、歯磨き、髭剃りなどが誘因となる。疼痛は正中を超えることはなく、その性状は電撃様の鋭痛、強度は激烈で、持続時間が短いのが特徴である。
 顎口腔領域の激烈な疼痛を主訴に歯科を受診した患者を診察する際、まずは歯髄炎など歯由来の疼痛を鑑別しておく必要がある。本例では複数の残根、根尖病巣を有する歯を認めたが、冷水痛、温水痛ならびに夜間痛は認めなかった。さらに歯肉の腫脹、打診痛を認める歯はなく、歯由来の疼痛は否定的である。
 側頭部から頸部にかけての疼痛は、顎関節症患者に頻繁に認められる症状である。その大半は咀嚼筋、下顎頭の圧痛や顎運動時の疼痛で、激痛ではなく、安静時痛は認めない。本例では、咀嚼筋、下顎頭に圧痛はなく、疼痛が激烈な鋭痛であることより、顎関節症は除外できる。
 持続性特発性顔面痛は、以前は非定型顔面痛と呼ばれていた病態で、神経痛の特徴をもたず、他の障害が考えにくい持続的または間欠的な顔面の疼痛である。神経分布に従わず、ストレス、疲労などが影響因子として挙げられている。
 本例では疼痛の特徴ならびに痛みを誘発するトリガーゾーンが認められたことより、臨床的にはTNが疑われた。カルバマゼピンを投与したところ、疼痛はほぼ消失した。占拠性病変などを原因とした二次性TNを除外するためMRIにて精査を行ったところ、左小脳橋角部に出血を伴う腫瘍が認められた(図2)。10年ほど前に突発性難聴を指摘されていたこと、MRIにて腫瘍内部に出血巣が認められたことを併せ考え、以前より存在した脳腫瘍が出血により増大し、TNを惹起したと推察された。手術療法が施行され、左側顔面の疼痛は消失した。
 臨床所見のみでは、典型的TN、二次性TN、特発性TNの鑑別は困難である。TNを疑う症例においては、頭蓋内病変の存在を除外するための頭部画像検査は必須であると考える。

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図2 頭部 MR 画像(T2強調像)
図2 頭部 MR 画像(T2強調像)
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