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2020年09月号 「右下顎のびまん性腫脹」
4.骨形成線維腫

 口腔内に発症する腫瘍性病変は、歯原性腫瘍と非歯原性腫瘍に大別される。そのうち、顎骨内に発症する腫瘍は歯原性腫瘍が多くを占めている。WHOの2005年の分類では、「歯原性上皮からなり……」、「歯原性上皮と歯原性外胚葉……」、「間葉性あるいは……」、「骨関連性病変」の4つに分類されていた。2007年には3分類に改訂され、新たに2017年の分類となっている。
 本症例は10歳と若年者であり診断を確実にするため、患者家族の同意も得たうえで全身麻酔下での下顎骨生検を行った。
 病理組織診断は線維性骨性病変であった(図5)。線維性骨性病変は、セメント質骨性異形成症・家族性巨大型セメント質腫・線維性骨異形成症・骨形成線維腫に分けられる。
 患者は右下顎の腫れを主訴に受診しており、顎骨膨隆が一般的に起こらないことからセメント質骨性異形成症を否定し、家族歴にとくに異常は認められないことより、家族性巨大型セメント質腫を否定した。さらに、X線所見から線維性骨異形成症は病変と正常骨との境界が移行的であることより、本症例では否定的と思われ骨形成線維腫と診断した。また、2017年の新WHO分類によれば歯原性由来の病変であることより、良性間葉性歯原性腫瘍のセメント質骨形成線維腫に分類されるものと思われた。
 骨形成線維腫の処置法は、一般的には切除・摘出を基本とするが、大きさによっては顎切除となる場合もある。本症例は年齢的に成長期であり、精神的なサポートも必要と思われる。現在外来にて定期的な経過観察を継続中であるが、右下顎の膨隆、口唇の知覚鈍麻は認められていない(図6)。

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図5 既存の海綿骨から連続して、不規則な石灰沈着を伴う網目状のWoven boneの形成と線維性間質増生を認める。骨梁辺縁には破骨細胞が散見されるが、あきらかな骨芽細胞の縁取りは不明である。骨(セメント質)成分有意の線維性骨病変を示す
図5 既存の海綿骨から連続して、不規則な石灰沈着を伴う網目状のWoven boneの形成と線維性間質増生を認める。骨梁辺縁には破骨細胞が散見されるが、あきらかな骨芽細胞の縁取りは不明である。骨(セメント質)成分有意の線維性骨病変を示す
図6 初診より2年後のパノラマX線写真。埋伏したの移動を認める
図6 初診より2年後のパノラマX線写真。埋伏したrd43の移動を認める

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