歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド

歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド
Top診断力てすと > 2020年07月号「頬粘膜の腫脹、出血」

診断力てすと  診断力てすと

2020年07月号 「頬粘膜の腫脹、出血」
1.血小板減少症

【診断のポイント】
 当科の診断を血小板減少症として、血液内科に精査加療を依頼した。血液内科において「特発性血小板減少性紫斑病(ITP)」と診断され、より詳細な病名となった。
 なお、被疑薬をカルバマゼピンとした「薬剤性血小板減少症疑い」を否定しきれていない。その理由として、X年9月ごろの近医内科での血液検査において異常がなかったこと、X年10月中旬に他院にて三叉神経痛と診断されてカルバマゼピンの内服が開始となったこと、これらに加えて、骨髄所見において巨核球の増生を認めたが、各血球系統に異型を認めなかったことによる。
【経過】
 血小板数は前述のとおり1×103/μLと極めて低値であり、脳出血や消化管出血などにより死に瀕する可能性を有した。血液内科にて深刻な病状であることを告げられたうえで、早急に入院加療が開始された。血小板輸血、副腎皮質ステロイドホルモン投与などにより、入院から1週間ほどで血小板数は54×103/μLまで回復し、入院から2週間ほどで退院となった(退院時の血小板は149×103/μLであった)。
 当科は口腔衛生管理の介入を行った。このたびの入院を機にカルバマゼピンの内服は中止となったが、三叉神経痛様症状は自然消失した。
【考察】
 薬剤性血小板減少症である場合は、まず被疑薬を中止することが原則であるが、本例は被疑薬中止のみで自然回復を待つという時間的猶予はなく、血小板輸血、副腎皮質ステロイドホルモン投与などの加療は不可避であった。独歩での来院であり、一見では誤咬による単純な内出血とも受け取れる状態であったが、極めて重篤な状態を孕んでいた。
 なお、カルバマゼピン、ファモチジン、ラベプラゾールなどは血小板減少の副作用を来し得る薬剤として厚生労働省より報告されている。カルバマゼピンは三叉神経痛において歯科で処方されることのある薬剤であること、十分な問診で得た既往歴や薬剤内服歴などの情報は重要な診断材料になることを念頭におきたい。

歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド

<<一覧へ戻る
歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド
歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド