2020年5月号 「右口底部の有痛性腫脹」
A | 3.口底部悪性腫瘍 |
右口底部の有痛性の腫脹であったが、正常粘膜で被覆されており、扁平上皮癌を疑う所見はなかったものの、唾液腺腫瘍などを念頭において診断を進める必要がある。腫瘤に関しては悪性腫瘍の可能性もあり、経過観察せず専門医療機関に紹介することが重要である。
生検所見:局所麻酔下にて生検を実施した。病理組織学的所見として、免疫染色を行い既存の構築を破壊しながら浸潤し、神経周囲への浸潤を認められた。悪性唾液腺腫瘍(腺癌または筋上皮癌)であった。
処置および経過:治療方針として、切除手術を行い、必要に応じて放射線治療および化学療法を行うこととした。
全身麻酔下にて、右口底部悪性唾液腺腫瘍切除術と植皮術を施行した(図4)。その後、放射線治療(66グレイ)を実施した。後日、転移性肝癌(腺様嚢胞癌)となり、近医総合病院腫瘍内科にて化学療法を開始した。
病理組織学的所見:口底部悪性腫瘍(腺様嚢胞癌)
pankeratin陽性の導管上皮細胞とα-SMA陽性の筋上皮細胞の増生からなる悪性腫瘍で、篩状構造、腺管形成を伴い、周囲浸潤性に増殖する(図5、6)。
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図4 術中
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図5 病理組織画像
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図6 術後経過