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2020年04月号 「X線写真で認められた根尖部透過像」
4.セメント質骨異形成症

 セメント質骨異形成症は顎骨骨体部に発生する非腫瘍性疾患であり、40代以降の女性に多くみられ、下顎前歯部や臼歯部に好発する。臨床症状に乏しく、X線写真において偶然に発見されることが多い。初期は根尖部歯根膜腔の拡大に始まり、次第に根尖に連続する境界明瞭なX線透過像となり、中期には透過像内に不正型な小塊状の不透過像が出現し、成熟期には塊状の不透過像を呈する。病理組織所見では、初期には線維芽細胞および線維性結合組織の増生が主体を占め、病変が進むにつれてセメント芽細胞や骨芽細胞が出現し、塊状ないしは梁状のセメント質様硬組織が形成される。成熟期になると周辺部を残して病巣全体がこれらの硬組織で占められる。一般的に、感染や不快症状を起こさないかぎり治療は必要とせず、経過観察を行う場合が多い。根尖部のX線透過像を根尖膿瘍と誤診しやすく、不用意に根管治療を行い感染を生じさせると難治性となるため注意が必要である。
 本症例においては、X線透過像を認め、組織学的には線維性結合組織と骨様組織の増生を(図5)、また骨様組織の周囲には骨芽細胞および破骨細胞と考えられる多核巨細胞を認め(図6)、初期から中期の病態と考えられた。先に述べたとおり一般的には処置の必要はないが、本症例では矯正的要件からスペース確保のためにrd2抜歯と病巣部分の摘出を行うこととなり、現在まで良好に経過している。

  
【参考文献】
  1. 1)大倉一徳:顎骨に生じた限局性セメント質骨異形成症の臨床病理組織学的研究.口腔病学会雑誌,68(1),2001.
  2. 2)田中健雄,佐藤 徹,野上喜史,栃原しほみ,中川洋一,浅田洸一,石橋克禮:セメント質骨異形成症の臨床的,病理学的検討.日本口腔科学学会雑誌,54(2),2005.
  3. 3)山田真一郎,内田啓一,高田匡基,嶋田勝光,落合隆永,杉野紀幸,長谷川博雅,各務秀明,田口 明:セメント質過形成を伴う下顎第三大臼歯に発生した骨性異形成症の1例.歯科放射線,56 (2),2016.
図5 根尖部の病理組織像➁
図5 根尖部の病理組織像➁
図6 根尖部の病理組織像➂
図6 根尖部の病理組織像➂


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