2020年3月号 「口蓋の無痛性腫脹」
山城正司 Masashi YAMASHIRO
NTT東日本関東病院 歯科口腔外科 〒141-8625 東京都品川区東五反田5-9-22
図1 初診時の口腔内所見
図2 同、CT画像所見(骨モード、前頭断)
図3 細胞診所見
患者: | 29歳、男性 |
主訴: | 左口蓋部の腫脹 |
現病歴: | 半年ほど前に左口蓋部の腫脹に気づいたが、痛みなどはないため放置していた。その後も大きさなどに変化はなかったが、かかりつけ歯科医に相談したところ、専門医による精査を勧められ、病院歯科口腔外科を紹介された。 |
既往歴: | 気管支喘息 |
現症: | 左口蓋粘膜に、直径8mm大の弾性軟の腫瘤を認める。被覆粘膜は正常で、発赤や潰瘍形成は認めない(図1)。頸部リンパ節腫大は認めない。画像検査の後、穿刺吸引細胞診を行ったところ、無色透明な粘液様の内容液が吸引された。 |
画像所見: | パノラマX線写真では患側歯に根尖病巣は認めず、CT画像の軟組織モードで口蓋腫瘤が描出され、骨モードでは同部口蓋骨の辺縁整な圧迫吸収像を認めた(図2)。 |
穿刺吸引細胞診所見: | 泡沫細胞を多数見る嚢胞性背景に、異形の乏しい類円形核の上皮細胞集塊を認める。一部の集塊中には、淡いピンク色の粘液を入れた粘液細胞も見られる(図3)。 |
Q | 最も疑われる疾患名は? |
1.口蓋膿瘍 | |
2.粘液嚢胞 | |
3.多形腺腫 | |
4.粘表皮がん |