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2019年7月号 「顎骨内の歯牙様不透過像」
2.低位歯

 パノラマX線写真で歯冠部に金属様の不透過像が認められることから、かつて機能していた歯が顎骨内に埋没した低位歯(submerged tooth)と診断し、保存不能な6とともに抜歯する方針とした。感染が生じていたため、消炎後に全身麻酔下6で抜歯術を施行した。粘膜骨膜弁を翻転し、6を抜歯すると、歯石で覆われた6の歯冠の一部が確認され、容易に抜歯できた(図4)。6には多量の肉芽組織、歯石が付着し、咬合面にアマルガム充填がなされていた(図5)。
 一般的に、歯の低位とは咬合平面に達していない状態とされるが、一度萌出し咬合位に達した歯が何らかの原因で沈下して低位となった、いわゆるsubmerged toothの報告は、永久歯においては少なく、わが国では「低位歯」、「圧入埋伏」、「埋没」、「沈下」などの名称あるいは表現で報告されている。埋伏歯との鑑別としては、う蝕治療痕や咬耗などの存在が、かつて萌出し機能していた証拠となり、自験例ではアマルガム充填がそれを示している。
 発生機序としては、外傷、骨性癒着、咬合圧、代謝障害などが挙げられており、定説はないが、骨性癒着により萌出が妨げられ、周囲の成長により取り残されたことで、相対的に低位となったことに、隣接歯からの圧迫などの外力が絡み合って生じるのではないかと述べている報告が多い。自験例は病理組織検査で根分岐部に骨性癒着の所見が観察されており、何らかの原因で萌出障害が生じ、そこに隣接歯の圧迫が加わったことで沈下が開始、さらに隣接歯が傾斜することで対合歯からの咬合力が沈下を促進する力として作用し、埋没したものと推察された。
 処置に関しては、自験例は保存不能と判断し抜歯したが、報告例の多くも抜歯されている。若年例で低位の程度が軽微であれば、矯正治療や意図的脱臼、あるいは矯正治療を併用しての骨延長法の適用も考慮の余地があろう。なお、乳歯においては低位乳歯、低位乳臼歯としてしばしば観察される。乳臼歯の低位が重度であると、後継永久歯の萌出障害を招くことがあるなど、種々の不具合を来すことがある。低位乳歯に遭遇した際には、低位の程度、咬合状態などを詳細に診査し、慎重に対処することが求められる。

図4 術中写真。7抜歯後の状態。大量の歯石と6の歯冠の一部(矢印)が認められる
図4 術中写真。6抜歯後の状態。大量の歯石と6の歯冠の一部(矢印)が認められる
図5 摘出物写真
図5 摘出物写真


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