A | 3.骨髄炎 |
臨床診断:大理石骨病に伴う右側下顎骨骨髄炎。
処置および経過:AMPC(アモキシシリン)の投与にて急性症状が改善した後に、全身麻酔下での抜歯および腐骨除去を行った。周囲骨は出血がみられる部位まで、骨鋭縁を残存させないように削除した(図4)。下顎管の露出はなく、骨膜を含めた粘膜弁で創部を完全に被覆するように閉創した。病理組織学的検査にて、悪性所見はみられず、骨髄炎の診断であった。術後1年以上が経過したが、再発なく経過良好である。
病理組織学的所見:核の抜け落ちた腐骨の周囲に、炎症性細胞の浸潤がみられた(図5)。
大理石骨病:骨組織における破骨細胞の消失あるいは機能不全により、全身的な骨硬化がみられる稀な疾患であり、歯周炎や抜歯窩などからの感染により、難治性の顎骨骨髄炎が生じやすい。歯に関する異常としては、多数歯の埋伏、エナメル質減形成、歯冠の変形、歯根の発育不全、乳歯の埋伏、永久歯の一部無形成、萌出遅延、歯根の形成遅延、歯根と骨の癒着などが報告されている。家族性に発症することが多く、遺伝形式や重篤度、発症時期などによって分類される。
本症例は歯の形態や萌出の異常はみられず、成人以降に発症した軽症型症例と推察された。成人以降に発症した症例では、過去に抜歯後のトラブルがみられなくても、難治性の顎骨骨髄炎が生じるリスクがあり、注意が必要と考えられる。
難治性顎骨骨髄炎:近年では薬剤関連を含めた顎骨骨髄炎や顎骨壊死が増えてきており、治療法として外科的療法の有用性が多数報告されている。外科的療法の他には、高圧酸素療法や局所持続洗浄療法なども報告されているが、十分なエビデンスは得られていない。外科的療法においては、腐骨除去や掻爬だけではなく、周囲骨や骨鋭縁の削除が重要と考えられる。また、術後再発を認めた報告もあり、定期的な経過観察および感染予防が重要である。
図4 術中写真
図5 病理組織写真
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