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2019年2月号「がん治療中に遷延する口腔粘膜のびらん」
4.免疫チェックポイント阻害薬(キイトルーダ®
による免疫関連有害事象

 近年、がん薬物療法の現場において、抗PD-1抗体ニボルマブ(オプジーボ)や、抗CTLA-4抗体イピリムマブ(ヤーボイ)などの免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる新たな治療薬が登場し、悪性黒色腫や難治性非小細胞肺がんなどさまざまながん種で適用を得ている。本薬剤は、がん細胞に対するT細胞の免疫反応を活性化(正確には活性の抑制を解除)することにより抗がん効果を得るという、これまでの殺細胞性の抗がん剤や分子標的薬剤とはまったく異なる作用機序を有し、既存薬を超える生存期間の延長が報告されている。しかしその一方で、従来の薬剤ではみられなかった免疫関連の副作用(immuno-rerated Adverse Event)が報告されており、迅速かつ適切な対応が重要とされている。
 本薬剤で最も頻度が高い有害事象は皮膚毒性であるが、口腔にも頻度は低いもののいくつかの有害事象の発症が報告されている。
・口腔乾燥症
 pembrolizumab使用患者の約4〜7.2%で、口内乾燥症(一般にグレード1〜2)が報告され、唾液腺の細胞傷害性Tリンパ球浸潤を伴うシェーグレン症候群の臨床的特徴を示す。
・味覚異常
 PD-1およびPD-L-1処置患者の3%未満で中等度の味覚異常(グレード1または2)が認められている。
・扁平苔癬様の粘膜変化
 口腔粘膜に扁平苔癬様の変化を発症することが報告されている。病変は、網状または線状の白色の口腔粘膜変化として出現し、時に痛みや紅斑、潰瘍形成を伴う。病理学的に粘膜組織下に組織球の浸潤が認められる。局所ステロイド治療に良好に反応する。
処置および経過:殺細胞性抗がん剤(ジェムザール®)はすでに終了後長期経過しており、関連は薄いと考えられた。臨床経過と粘膜の所見から、免疫チェックポイント阻害薬(キイトルーダ®)による免疫関連有害事象(扁平苔癬様の粘膜変化)と診断、ステロイドの口腔内外用(サルコート®50㎍/day)と、粘膜保湿を目的とした含嗽を開始した。ザイロリック®の含嗽は機序から不要と考え中止した。ステロイドの口腔内外用開始後2週間程度で、痛みなどの自覚症状はほぼ消失し、粘膜の白色変化も改善傾向を示した(図2)。
 半年を経過した現在もキイトルーダ®は継続中であるが、口腔内は保湿目的の含嗽と、症状が気になる際に時折塗布するステロイド軟膏で管理し、強い再燃なく良好に経過している。

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図2 治療開始2週間後の口腔内写真


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