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2018年12月号 「顎下部に腫脹を認めた病変」
3.顎骨骨髄炎

 顎骨骨髄炎は歯性感染が原因となり、顎骨の骨髄を中心に炎症を起こす疾患であるが、近年は放射線性や薬剤性の顎骨骨髄炎が増加している。
経過:本症例は顎下部に弾性硬の腫脹を認め、腫瘍性病変や歯性感染症が疑われた。しかし、受診時には疼痛の訴えや発熱はなく、身体所見や血液検査からも重度の歯性感染症を疑う所見は認められなかった。腫瘍性病変の可能性も否定できなかったため、生検術を施行した。病理組織学的検査所見では、H-E染色にて筋組織や脂肪組織中に好中球の目立つ炎症性細胞や血管内皮細胞の増生を認め、化膿性炎症による腫瘤形成が疑われた。
 患者は前立腺がんのホルモン療法中で、骨転移も認められたため、約2年前よりデノスマブの投与を受けていた。
 薬剤関連性顎骨骨髄炎(薬剤関連顎骨壊死〔ARONJ〕ステージ0)の診断のもと、抗菌薬の投与と口腔衛生管理を行ったところ、腫脹は消失し、画像上も腫瘤様の像は消失した(図4)。
薬剤関連顎骨骨髄炎・顎骨壊死の特徴・原因・対策
薬剤関連顎骨骨髄炎・顎骨壊死は、骨吸収抑制薬・血管新生阻害薬の合併症として経験する疾患である。悪性腫瘍の骨転移や骨粗鬆症などに使用されるビスホスホネート系薬、あるいは抗RANKL抗体であるデノスマブによる治療中もしくは治療歴のある患者にみられることがある。がん患者やがんの既往のある患者、骨粗鬆症の既往のある患者は、骨吸収抑制薬による治療歴の有無を問診の段階で聞き逃すことのないようにしなければならない。また、ARONJの発症頻度は、骨粗鬆症により治療を受けている患者に比べて、がん疾患で治療を受けている患者に多いとされており、とくに前立腺がんや乳がんなど骨吸収抑制薬の投与を受ける可能性の高い患者には注意が必要である。ARONJは臨床症状や画像所見によりステージングされているが、本症例のように口腔内に骨の露出を認めず、画像的にもあきらかな硬化像を認めない場合でも、化膿性の炎症による腫瘤様病変を形成することがある。
 ARONJの発生頻度は高くないものの、今後も骨吸収抑制薬による治療を受ける患者は増加していくことが考えられるため、患者数の増加が予想される。歯科医師は口腔顎顔面領域を扱う専門家として、ARONJの発生の予防に努めるとともに、各診療科と適切に連携をとって治療にあたらなければならない。そのためにも、骨吸収抑制薬の治療や薬剤について、正しい知識を身につけておく必要がある。

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図4 4ヵ月経過時のCT画像
図4 4ヵ月経過時のCT画像

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