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2018年11月号「舌がんの術後病変」
4.肉芽腫

 悪性腫瘍の場合、術後経過観察は5年をもって軽快治癒として一区切りとされる場合が多いが、当科では可能なかぎり術後の経過観察を行っている。本症例は、初診から現在に至るまで定期的に経過観察を行っている。術後右舌縁粘膜は一部に瘢痕拘縮を認めたが、表面粘膜は平滑で再発の所見はなかった。しかし、術後約10年を経て右舌縁粘膜の一部に白色病変を認めるようになり、さらに粘膜面に粗造感を呈したことにより生検を行ったところ、SCCと診断され舌部分切除術を行った(図4)。その際、舌の術後瘢痕拘縮を緩和する目的にて、切除部位には吸収性組織補強材を用いた。
 術後の経過は良好であったが、4ヵ月後、切除部位に腫瘤を認めた。腫瘤は充実性であり、粘液嚢胞は否定的である。悪性腫瘍の場合、経験的に術後数ヵ月で再発を来す場合が多く、術後の経過観察はこの期間とくに注意深く行っており、慢性の刺激などによって形成されやすい線維腫などは否定的である。
 採血結果にて、SCC抗原が高値を示した。SCC抗原が高値を示す疾患としては、がん(子宮頸がん・頭頸部がん・食道がん・肺がん、皮膚がん)、腎臓疾患(腎硬化症、腎不全など)、緑膿菌感染症、皮膚炎(アトピー性皮膚炎)が挙げられるが、既往疾患に腎硬化症があり、反映したものと思われる。
 腫瘤は表面滑沢で潰瘍はなく、易出血性でもなく、腫瘤周囲組織にあきらかな硬結が認められず、局所麻酔下に切除を行い、肉芽腫の診断を得た(図5)。
 創部に用いた吸収性組織補強材は、術後の瘢痕拘縮も少なく、治癒を促進する肉芽形成増進効果があるとの研究報告もあり、舌の部分切除などの使用には有用であると思われる。しかし、臨床的に再発は否定的であっても、悪性腫瘍の術後再発の可能性もあり、迅速な対応が望まれる。

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>図4 重層扁平上皮の全層にわたり、異型細胞が増殖する像を認めた。高分化型のSCCである
図4 重層扁平上皮の全層にわたり、異型細胞が
増殖する像を認めた。高分化型のSCCである
>図5 高度の炎症性細胞浸潤を伴った潰瘍が形成されている。炎症性肉芽腫と思われ、悪性像は認められない
図5 高度の炎症性細胞浸潤を伴った潰瘍が形成されている。炎症性肉芽腫と思われ、悪性像は認められない

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