歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド

歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド
Top診断力てすと > 2018年9月号「繰り返す下顎智歯の疼痛」

診断力てすと  診断力てすと

2018年8月号 「繰り返す下顎智歯の疼痛」
4.原発性骨内癌

 2017年のWorld Health Organization(WHO)分類では歯原性癌腫は5つに分類され、その一つである原発性骨内癌(Primary intraosseous carcinoma, NOS) は、一般的に顎骨内の歯原性上皮成分より発生するものと考えられている1)。性差は男性に多く、平均年齢は55〜60歳とされる。しかしながら、年齢層は広く、小児に発生した報告もある。
 歯原性嚢胞やその他の良性前駆細胞より発生する場合もあり、先行性病変として、歯根嚢胞が最も多く、次いで含歯性嚢胞、歯原性角化嚢胞の順で多いとされる。歯原性嚢胞の嚢胞壁から癌が発生したと証明するためにGardner2)は、@口腔粘膜癌または転移性癌が嚢胞に浸潤したものではないこと、A逆に癌が嚢胞性変化したものではないこと、B嚢胞性エナメル上皮腫の癌化ではないこと、C病理組織学的所見において正常嚢胞上皮が扁平上皮癌へと移行している状態が確認できることを条件に挙げている。しかし、通常無症候性に進行する本疾患では、早期病変で発見されることは稀で、癌の進行に伴い正常嚢胞上皮を消失させるため、移行部の確認は困難な場合もある。自験例は、病理組織学的に正常嚢胞上皮と癌化病変の移行部は確認できなかったものの、ld6歯冠周囲の組織に異型扁平上皮の角化を伴う浸潤性増殖を認め(図3)、かつld7周囲歯肉粘膜上皮に癌を認めなかったこと、かかりつけ歯科医から提供されたパノラマX線写真にてld8歯冠周囲に以前より透過像を認めていたことから、含歯性嚢胞由来であると推察された。
 予後については、十分な症例がないためあきらかではないが、概してよくないとされる。60%もの症例で局所再発を認め、3年生存率は40%と報告されている1)。自験例は、右側下顎骨原発性骨内癌の診断のもと下顎骨区域切除術、右側全頸部郭清、遊離腓骨皮弁による再建、気管切開術が施行された。術後1年のパノラマX線写真を示す(図4)。その後経過良好であったが、術後2年で舌根部に再発を認め、現在、化学放射線療法を実施している。

【参考文献】
  1. )A.K.El-Naggar, J.K.C.Chan, J.R.Grandis, et al.(eds.): World Health Organization Classification of Tomours. WHO Classification of Head and Neck Tumours. IARC Press, Lyon, 207-209, 2017.
  2. )Gerdner, A. F.: The odontogenic cyst as a potential carcinoma: a clinicologic appraisal. J Am Dent Assoc, 78: 746-755, 1969.
図4 術後1年のパノラマX線写真
図4 術後1年のパノラマX線写真



<<一覧へ戻る
歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド
歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド