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2018年8月号「舌下部の無痛性腫瘤」
3.舌下腺腫瘍

 自験例は疼痛の既往がなく初診時も炎症所見を認めず、また唾石を疑う硬固物を触知しなかったため、舌下腺炎、唾石症は否定的であった。また、がま腫にみられる唾液の貯留を疑う波動を触れず弾性硬の腫瘤を触知し、MRI所見からも腫瘍が疑われた。
処置および経過:生検を行ったところ、多形腺腫との病理組織学的診断を得たため、舌下腺の前方部に存在する腫瘍を舌下腺とともに一塊として摘出した。手術時、周囲組織との癒着は認めなかった。以後、再発を認めていない。
摘出標本所見:腫瘍は直径20o大で舌下腺の前方に存在し、被膜を有し、割面は充実性で均一な黄白色を呈していた。腫瘍の全周は舌下腺組織で被覆されていた(図3)。
病理組織学的所見:腫瘍は薄い線維性被膜で全周を被われており、腫瘍細胞の被膜内浸潤は認めなかった。管腔形成を示す部位や、粘液腫様や硝子化を伴う間質が存在する部位、類円形の核をもつ細胞が胞巣状、索状の増殖を示す部位、多角や紡錘型の細胞が見られる部位など多彩な様相を呈していた。腫瘍細胞に著明な異型はみられなかった(図4)。
病理組織学的診断:多形腺腫
 多形腺腫は、全唾液腺腫瘍の約55〜67%を占め、最も発生頻度の高い良性腫瘍である。部位別発生率は耳下腺が69〜79%を占め、顎下腺が6〜11%、小唾液腺が10〜23%に対し、舌下腺は0〜2%と報告されている。
 唾液腺腫瘍の発生率は頭頸部に発生する腫瘍のなかでは3〜10%と低く、そのなかでも舌下腺に発生する唾液腺腫瘍は耳下腺、顎下腺、小唾液腺と比較して最も低い(0.4%以下)と報告されている。しかし発生頻度が低いにもかかわらず、悪性腫瘍の発生率は耳下腺腫瘍の15〜32%、顎下腺腫瘍の37〜41%、小唾液腺腫瘍の46〜49%と比較して舌下腺腫瘍は70〜86%と高く、組織型は腺様嚢胞癌が最も多いと報告されている。本症例のように舌下腺腫瘍が疑われる場合は、悪性腫瘍の可能性が高いことを念頭におく必要がある。

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>図3 摘出物所見
図3 摘出物所見
>図4 摘出物病理組織所見、HE染色
図4 摘出物病理組織所見、HE染色

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