A | 3.IgG-κ型孤立性形質細胞腫 |
診断と経過:臨床的に下顎骨悪性腫瘍を疑い、生検術を施行。病理組織学的診断は形質細胞性腫瘍と診断され、H-E染色で形質細胞様の異型細胞が増殖。各種免疫染色の結果、CD138陽性、κ鎖は陽性、λ鎖は陰性であった(図5)。
そこで多発性骨髄腫(Multiple myeloma:MM)を疑い、血液内科へ対診。血液検査ではIgG正常、IgA、IgMの抑制はなく、貧血や腎障害、電解質異常も認めなかった。血清免疫電気泳動検査ではIgG-k型単クローン性蛋白(M蛋白)を検出。骨髄穿刺では異型形質細胞の増加なく、正常血液像であった。尿検査でもBence Jones Protein(BJP)陰性、全身骨シンチグラフィで下顎骨以外に異常集積は認めなかった。以上、International Myeloma Working Group(以下、IMWG)の診断基準(表1)より、下顎骨のIgG-κ型孤立性形質細胞腫と診断した。
形質細胞が腫瘍性増殖を来す形質細胞腫は、骨髄内に主座をもつ骨の孤立性形質細胞腫(solitary plasmacytoma of bone:SPB)と骨髄外に主座をもつ髄外性形質細胞腫(Extramedullary plasmacytoma of bone:EMB)に分類される。とくにSPBはEMBに比べMMに進行することが知られている。そのためSPBと診断された患者は、潜在性病変が発見されることが多く、確定診断には徹底的な評価により全身性病変の存在を除外する必要がある。
SPB の治療については、一般的に放射線感受性が高い腫瘍といわれている。これまでの頭頸部領域の治療では、局所療法として放射線治療単独、外科切除と放射線療法の併用などが報告されている。その理由としてMM と SPB はその進展機序がまったく異なり、局所腫瘤を形成するため固形腫瘍に似た性質を有していることが理由に挙げられている。治療方針には、NCCN Guidelinesや造血器腫瘍診療ガイドラインなどが準用される。
表1 IMWGの診断基準によるSPBの確定診断
1 | 血清または尿中にM 蛋白を検出しない(時に少量のM蛋白を検出することがある) | |
2 | 単クローン性の形質細胞増加が1ヵ所のみの骨破壊 | |
3 | 非病変部の骨髄所見で、形質細胞のびまん性増殖がなく、MMに相当しない | |
4 | 全身骨X線検査正常および、脊椎と骨盤のMRIが正常 | |
5 | 形質細胞増殖に関連した臓器・組織障害がない(孤立性骨病変以外の臓器障害がない) |
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