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2018年7月号「難治性口内炎」
4.腫瘍随伴性天疱瘡

 腫瘍随伴性天疱瘡の臨床症状は、口腔粘膜のびらん、潰瘍を伴う難治性の口腔内病変と多形性紅斑や水疱形成など、多彩な皮膚病変に代表される。これらの臨床症状は、Stevens-Johnson症候群やベーチェット病、尋常性天疱瘡と類似しており、鑑別診断は困難である。病歴からStevens-Johnson症候群は考えにくく、また口腔粘膜の症状が強く、陰部潰瘍が認められないことと、皮膚の結節性紅斑が認められないことからベーチェット病は除外される。
各天疱瘡において検出される自己抗体を表1に示す。自己抗原の同定は、正常ヒト表皮抽出液を用いた210KDa蛋白(エンボプラキン)と190KDa蛋白(ペリプラキン)の2本のバンドに強く反応することが、腫瘍随伴性天疱瘡の確定診断には最も重要とされている。腫瘍随伴性天疱瘡に合併する病変は、非ホジキンリンパ腫が最も多く、慢性リンパ球白血病、Castleman病などのリンパ増殖性疾患が多い。腫瘍随伴性天疱瘡の治療法は、尋常性天疱瘡重症例に準じてステロイド剤投与が主体であるが、奏効しない場合には免疫抑制剤、血漿交換療法が併用される。
 また、最近ではリツキマブの投与も試みられている。口腔粘膜病変には治療が奏効せず、対応に苦慮している症例が多い。腫瘍随伴性天疱瘡の予後は不良であり、90%の症例が腫瘍随伴性天疱瘡の合併症、あるいは悪性リンパ腫などの原疾患により2年以内に死亡するといわれている。
 腫瘍随伴性天疱瘡は非常に稀な疾患であるが、初発症状として重篤かつ難治性の口腔粘膜病変を伴うことが特徴であることから、われわれがファーストタッチする可能性が高い。そのため、他の粘膜病変との鑑別疾患として常に念頭に入れておく必要性がある。

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表1 おもだった天疱瘡において検出される自己抗体
自己抗体
瘍随伴性天疱瘡
デスモグレイン1
デスモグレイン3
エンボプラキン
ペリプラキン
粘膜優位型尋常性天疱瘡 デスモグレイン3
粘膜皮膚型尋常性天疱瘡 デスモグレイン1、3
類天疱瘡 BP180

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