2018年7月号 「歯肉が繰り返し腫れてすっきりしない」
A | 3.癒合歯による慢性炎症 |
概要:歯の形態異常は、歯胚の増殖期から萌出期の広い時期に見られる。歯の結合に関連する代表的な形態異常は、癒合歯(融合歯)、双生歯、癒着歯が挙げられる。複数の歯胚が、発育段階で結合したものを癒合歯、歯胚の分裂によるものを双生歯としている。また、独立した2つの歯胚から生じた歯が、後に歯根部のセメント質の肥厚により結合したものを癒着歯として区別している。とくに癒着歯は、上顎大臼歯部で好発すると報告されている。
治療法と経過:左側上顎部の精査を行うため、歯科用Conebeam CTを用いて診査・診断を行い、CT画像において頬側の歯槽骨吸収像と、の歯根癒着像が確認できた(図2)。の根管処置は、2歯の根癒着により根尖までの根管処置が困難であったため、根尖部炎症が残存していたものと考えられた。また、癒着に伴う解剖学的形態不良を原因とするプラークコントロール不良により腫脹、排膿を繰り返し、の頬側には骨吸収が認められたものと考えられる。
処置経過としては、セフェム系抗菌薬の処方により急性炎症を消退させた後、の再根管治療は根の形態・癒着により治癒が得られない、また、の歯肉周囲炎が繰り返し見られることより、癒着歯をキシロカイン浸潤麻酔下にて抗凝固剤服用下のもと、止血のコントロールに配慮して抜歯を行った。抜去歯を観察すると、根尖部において2歯の歯根が完全に癒着しているのが確認できた(図3)。術後、炎症は消退し、経過は良好である。
この症例のように、隣在歯が著明に近接し、慢性根尖性歯根膜炎、智歯周囲炎を繰り返す症例においては、Conebeam CTを用いて診査することにより確定診断ができ、的確な処置を導ける。
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