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2018年6月号 「過剰埋伏歯による永久歯萌出遅延」
3.鎖骨頭蓋異形成症

 鎖骨頭蓋異形成症は、全身の膜性骨化の遅延を基本病態とし、鎖骨低形成、頭蓋骨縫合骨化遅延、歯牙萌出遅延、低身長を特徴とする、常染色体優性遺伝性疾患である。染色体6p21に存在するRunx2(runt-related transcription factor 2)遺伝子異常が原因とされる。Runx2は転写因子として、多能性の未分化間葉系細胞から骨芽細胞系列に分化を誘導し、成熟骨芽細胞では石灰化に関する基質蛋白質の産生調節に関与している。
 本疾患では、肩幅や上胸部は狭く、鎖骨の欠損や低形成が特徴的となる。X線検査では胸郭は釣鐘状を示す(図3)。脊椎・骨盤の障害もみられ、低身長(-2SD以下)を呈する。頭蓋顔面領域では前額前突、鼻根扁平、眼間解離がみられ、頭蓋骨縫合骨化不全、泉門部の骨形成不全が認められる(図4)。口腔領域では、上顎骨の発育不全、乳歯の晩期残存、永久歯の埋伏・萌出遅延、過剰歯が生じる。歯の萌出遅延の原因として、Runx2の変異により歯嚢や歯周靱帯の細胞の骨のリモデリングが障害されているとの報告がある。また、Runx2の変異は歯胚の上皮―間葉系の相互作用に影響を及ぼし、エナメル芽細胞や象牙芽細胞の分化異常を来すとされるが、過剰歯が生じる原因はあきらかではない。
 鎖骨や頭蓋骨の発育不全は、機能異常を生じにくく、治療対象となることは少ない。一方、顎口腔の症状は、審美・機能異常に直結するため、治療が必要となる。基本的には歯牙年齢に合わせ、永久歯の萌出の障害となる晩期残存乳歯や過剰歯を抜歯する。また、矯正力にて萌出させ歯列不正の改善を図る必要がある。ただし、骨のリモデリングが障害されている影響もあり、乳歯抜歯後も後続永久歯の萌出に結びつかず、また矯正治療で萌出が得られない症例も報告されている。
 本症例では、整形外科にて本疾患の診断を得た後、10歳時にld3と上顎正中過剰埋伏歯3本を、その後16歳時にlu3部、rd4ld5間、ld5ld6間、ld4ld5間の過剰埋伏歯(図5)を、全身麻酔下に抜歯した。その後、矯正治療にて咬合機能の回復が得られた。

図3  胸部単純X線写真(釣鐘状の胸郭)
図3 胸部単純X線写真(釣鐘状の胸郭)
図4 頭部単純X線写真(頭蓋骨縫合部の骨化不全)
図4 頭部単純X線写真(頭蓋骨縫合部の骨化不全)
図5 OsiriX?による3D画像(下顎咬合面観)(矢頭:3本の下顎過剰埋伏歯)
図5 OsiriX®による3D画像(下顎咬合面観)(矢頭:3本の下顎過剰埋伏歯)



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