
A | 3.左側上顎腫瘍性病変 |
今回の症例では、初診の際に神経症状を伴っており、徐々に痛みが進行している状況にあった。左側頬部の神経症状については、三叉神経痛も視野に鑑別診断を必要であると考え、必要に応じて脳神経外科などの受診を勧める旨を患者に説明した。初診時に当院ではが主たる原因の疾患であると考え、歯内治療を開始した。しかし、症状が改善傾向を示さなかったため、早期に精査・加療目的で大学病院に紹介した。
大学病院においても当初は、同様に左上歯内治療を行われた。その後、経過を追っていたが病変部改善が認められないために、追加の画像検査などが行われた(図2〜4)。CTでは上顎洞内の軟部陰影、周囲皮質骨の破壊を伴う骨吸収が認められた。さらに生検の結果、左側上顎腫瘍性病変と診断され、歯牙と腫瘍性病変の摘出手術が行われた。現在も正確な病理診断のため精査中である。
患者は、症状の原因がわからず、長い加療期間と神経症状に悩まされ疲弊しきっていた。われわれ歯科医師は、日常診療のなかで本症例のように稀な症例といつ遭遇するかわからない。現状を的確に把握し診療するなかで、必要を感じたときには、早期に大学病院などの専門医療機関に紹介を行うことは、開業歯科医院の非常に重要な役割だと考える。そのため、日頃から専門医療機関との連携を密にし、歯科医療チームの一員として地域包括医療を実践していくことが必要であると再認識した。
![]() 図2 CT像。初診より1ヵ月後に大学病院にて ![]() 図3 デンタルX線写真。 初診より6ヵ月後 |
![]() 図4 CT像。初診より6ヵ月後 |
【参考文献】
1)池田順行,星名秀行,他:舌顆粒細胞腫の1例と本邦報告97例の臨床病理学的解析.新潟歯学会誌,36:49-53,2006.
2)富永寛文,原田浩之,他:口腔に発生した顆粒細胞腫12例の臨床病理学的検討.日口科誌,58:97-102,2009.
<<一覧へ戻る