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TopQ&A補綴 > ジルコニアクラウンを 支台歯に応用できるか?(2020年12月号)
Q&A
法律(2020年12月号)
Qジルコニアクラウンを支台歯に応用できるか?
●局部床義歯の支台歯にジルコニアクラウンを使用した場合、クラスプの維持力や、 着脱によるジルコニアの亀裂や破折などの問題は生じないのでしょうか。
── 福岡県・M歯科
A
ジルコニアは高強度・高靭性および生体親和性に優れたセラミック材料として知られており、クラウン・ブリッジなどの歯冠補綴の材料はもとより、アバットメントやインプラント上部構造の材料として、インプラント補綴にも広く臨床応用されています。
 現在、局部床義歯の支台歯の歯冠補綴材料としては金属冠や陶材焼付冠が推奨されていますが、臨床の現場では、その材料特性を活かし、局部床義歯の支台歯として金属冠や陶材焼付冠の代わりにジルコニアクラウンを選択することが増えているように感じます。
 しかし、局部床義歯の支台歯としてジルコニアクラウンを使用した場合の、クラスプの維持力への影響やジルコニアクラウンの合併症などについては、あきらかにされていないことが多いのが現状です。
 そこで、ジルコニアクラウンの局部床義歯支台歯への応用に関する報告をもとに、ジルコニアクラウンの支台歯適応について、本稿で考察します。

1.クラスプの維持力への影響
田中ら1)は、モノリシックジルコニアクラウンと金銀パラジウム合金クラウンに対する、2種類の金属製エーカースクラスプ(コバルトクロム合金・金銀パラジウム合金)の着脱試験後の維持力の変化を報告しています。
 モノリシックジルコニアクラウンでの着脱試験後の結果では、クラスプの維持力の低下を示しました。これはジルコニアのビッカース硬度はコバルトクロム合金や金銀パラジウム合金よりも高いため、着脱を繰り返すことによりクラスプ内面に摩耗が生じたことが原因だと著者らは考察しています。
 しかし、モノリシックジルコニアクラウンでのクラスプの維持力の低下は、金銀パラジウム合金クラウンでの維持力の低下と比べ、同程度、もしくは小さいという結果も同時に示されています。そのため、モノリシックジルコニアクラウンは、コバルトクロム合金や金銀パラジウム合金で作製されたエーカースクラスプをもつ、局部床義歯の支台歯として有用であることが示唆されたと結論づけています。
2.ジルコニアクラウンを支台歯にした場合の合併症
 Pihlajaら2)は、レイヤリングタイプのジルコニアクラウンを局部床義歯の支台歯に用いた場合の予後について、後ろ向き追跡研究を行っています。
 研究に用いられたジルコニアクラウンの築盛陶材は唇側のみで、レストシートはジルコニアフレーム上に設定するクラウンのデザインとなっています。また、クラスプに使用された金属はコバルトクロム合金でした。平均追跡期間は4.2年で、合併症としては、11%で築盛陶材の破折、3%でレストシートの破折を認めたものの、レストシートのジルコニア表面の摩耗は認めなかったと報告しています。なお、レストシートの破折は、著しいブラキシズムを有する患者だったことが原因ではないかと推察しています。
 これらの結果より、著者らは、「築盛陶材の破折」は問題点として残っているものの、陶材焼付冠の代わりとして、ジルコニアクラウンを局部床義歯の支台歯に使用することを推奨できると述べています。

 以上、2つの論文の結果をみると、ジルコニアクラウンを局部床義歯の支台歯として使用するのは問題ないと考えられます。しかし、レイヤリングタイプのジルコニアクラウンは、築盛陶材の破折のリスクがあり、審美的に許容できるのであれば、モノリシックジルコニアクラウンの使用が望ましいと思われます。
 また、クラスプが接する部位のジルコニア表面の摩耗は認めないものの、クラスプ内面の金属の摩耗によるクラウン表面の着色が起こる可能性があります。
 ジルコニアクラウンの破折を防ぐためには、ガイドラインを遵守し、適切なクリアランスを確保した支台歯形成が重要です。とくに、クリアランス不足になりやすいレストシート部の形成には注意が必要です。
 筆者は以前より、モノリシックジルコニアクラウンを局部床義歯の支台歯に使用しており、いままでに問題は生じていません。しかし、長期経過を示す報告はないため、今後も注意深く観察する必要があると感じています。
 米国では現在、長岡3)により、モノリシックジルコニアクラウンを支台歯に用いた局部床義歯についてのランダム化比較試験が行われており、この研究報告にも期待したいと思います。

【参考文献】
  1. 1)Akihiro Tanaka, Nahoko Miyake, Hiromi Hotta, Shinji Takemoto, Masao Yoshinari, Shuichiro Yamashita: Change in the retentive force of Akers clasp for zirconia crown by repetitive insertion and removal test. J Prosto-dont Res, 63(4): 447-452, 2019.
  2. 2)Pihlaja Juha, Napankangas Ritva, Kuoppala Ritva, Raustia Aune: Ve-neered zirconia crowns as abutment teeth for partial removable dental pros-theses: A clinical 4-year retrospective study. J Prosthet Dent, 114(5): 633-636, 2015.
  3. 3)Hiroko Nagaoka: Removable partial denture abutments restored with monolithic zirconia crowns. Clinical Trial.gov, Identifier: NCT0 3283709.

徳富健太郎
長崎県・ 徳富歯科医院

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