Dd診断力てすと『がん治療中に遷延する口腔粘膜のびらん』デンタルダイヤモンド 2019年2月号

上野尚雄
Takao UENO
国立がん研究センター中央病院 歯科
〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1


図❶ 初診時の口腔内写真

表(1)初診時の血液検査結果


患者:80歳、男性
主訴:口腔内全体が荒れて痛い。食事がしみて食べづらい
既往歴:腎盂がん術後、肺転移。薬物療法中
現病歴:上記の診断のもと、2017年8月より抗がん剤治療(ジェムザール®)が開始された。副作用で口内炎はときどき出たが、主科からのザイロリック®のうがいとステロイド軟膏で自制内に制御できていた。2018年3月、原病の進行増大を認めたため、がん主治医より薬物の変更が検討され、免疫チェックポイント阻害薬であるキイトルーダ®が開始された。
キイトルーダ®開始後より口腔内全体に違和感が出現、とくに両側頬粘膜に広範囲にわたりびらんと白色の粘膜変化が生じ、食事(とくに熱いもの)がしみて痛み、食べづらくなった。ザイロリック®のうがいとステロイド軟膏を継続したが、2ヵ月以上経過しても症状は改善せず徐々に増悪傾向を呈してきたため、紹介により当科を受診した。
現症:口腔内の清掃状態は良好。軽度の口腔乾燥があり、泡沫状の唾液の貯留がみられた。両側頬粘膜は薄い白色変化がまだら状にあり、一部に発赤やびらん、潰瘍形成がある。自発痛はないが、食事時などに接触痛がある(図❶)。
臨床検査所見:特記すべき所見なし(表1)。

Q 最も疑われる疾患名は?

① 口腔のカンジダ感染
頬粘膜がん
③殺細胞性抗がん剤
(ジェムザール®)による口腔粘膜炎
④免疫チェックポイント
阻害薬(キイトルーダ®)による免疫関連有害事象