Dd診断力てすと『歯肉の腫脹および硬結』デンタルダイヤモンド 2021年01月号

2.顎放線菌症

処置および経過

右側上顎歯肉がんを疑い、耳鼻咽喉科にて病理検査を2度にわたり施行。上皮異形はなく、放線菌塊を認め、顎放線菌症と確定診断された(図4)。消炎処置として、半年間にわたりAMPC1,500mg/day内服投与したが改善を認めず、当科に紹介受診となった。その後、処置当日からAMPC750mg/day内服投与のもと、1⃣2⃣ならびに7⃣6⃣4⃣2⃣1⃣の抜歯術を施行。処置時、6⃣抜歯窩に灰白色で顆粒状の菌塊を伴う膿汁および多量の不良肉芽組織を認めた。その後、抜歯窩の上皮化と硬結部位の消失を認め、再発の徴候はみられず経過良好である(図❺)。

顎放線菌症は、嫌気性グラム陽性桿菌であるActinomyces属の感染により生じる特異性炎症性疾患である。顎・顔面部、腹部、胸部に好発するが、なかでも顎口腔領域の発生頻度が高く、約2/3を占めるといわれている1)

顎放線菌症の特徴的な臨床症状は、板状硬結、高度の開口障害、多発性膿瘍が挙げられる。感染経路は歯性感染が多く、根尖性歯周炎、辺縁性歯周炎、抜歯後感染や義歯による褥瘡などである2)。本症例では、年齢や既往歴、ならびに日常から口腔清掃を怠っていたことを鑑み、感染に対する抵抗力の低下が一因と考えた3)

顎放線菌症と悪性腫瘍の臨床像は、類似する場合があり、画像所見のみでの悪性腫瘍との鑑別は困難とされる。本症例のように重度の歯周病の場合、辺縁不整の骨破壊像を伴うため、悪性腫瘍との鑑別には注意を要する。

【参考文献】
1)鈴木啓佑,栗原 淳,柳澤さくら,他:小児に発症した顎放線菌症の2例.日口診誌,32:147-151,2019.
2)石原博史,鈴木克也,浜本宜興,他:顎放線菌症36例の臨床的検討.新潟歯会誌,21:141-149,1991.
3)高 楠旻,櫻井仁亨,小村 健:骨破壊を伴った放線菌性下顎骨骨髄炎の1例.日口外誌,56:34-38,2010.

図❹ 病理組織像(×400)

図❺ 処置後、経過観察時の口腔内写真

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です