Dd診断力てすと『オトガイ下の有痛性腫脹』デンタルダイヤモンド 2021年04月号

4.反応性リンパ節炎

アテロームは、顎下やオトガイ下の皮膚表面には異常がなかったことや、多発発生することは稀であり、考えにくい。

甲状舌管嚢胞は、頸部正中に発生し、顎下部に発生することはない。

悪性リンパ腫は、LDHや可溶性インターロイキン2が正常値であったため、考えにくい。

最後に、反応性リンパ節炎であるが、顎・口腔領域には原因病巣がないため耳鼻科にも対診したが、原因病巣はなかった。患者の頬にアクネが多発しており(図4)、皮膚科に対診した。ミノマイシン投与によりアクネと顎下部およびオトガイ下部の腫瘤は2週間後には改善し、アクネによる反応性リンパ節炎と診断した。

アクネは、思春期以降に性ホルモンの分泌増加に伴い発症する、毛包・脂腺系を場とするPropionihacterium acnesの増菌と炎症惹起性疾患である。

思春期という多感な時期に顔面に生じ、患者の学校や社会生活に大きな影響を与え、quality of life(QOL)を障害しやすい。しかし、アクネは一般的によくみられることから、疾患という意識が薄く、医療機関を受診することも少ない。

放置したり、誤ったスキンケア・治療法により、悪化して初めて医療機関を受診することも多く、ケロイドや瘢痕など不可逆的な状態に繋がる可能性がある。治療ガイドラインに沿った適切な指導・治療を早期に開始することが、悪化や癩痕形成を防ぐために重要とされる。

筆者らは、耳のピアスからの感染による頸部反応性リンパ節炎の経験もある。頸部リンパ節腫瘤は、口腔外科で取り扱う疾患以外にも、原因となる病変は多岐にわたることから、耳鼻科はもとより、皮膚科など、他科へも積極的に対診し、病変の早期の診断と治療が患者のQOLを高めるうえでも重要であると思われた。

図❹ 頬部の著しいアクネ

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