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刊行にあたって
佐賀県で開業しております、医療法人なりとみ歯科理事長 成富健剛と申します。
今回この企画にかかわらせていただく機会をいただき、心から感謝申し上げます。また、本書を手に取っていただいた読者の先生にも、心からお礼を申し上げます。
私が歯科医師になったのは昭和 63 年(1988 年)のことでした。
いまから 34 年前のことになります。また、なりとみ歯科を開業して 25年目となります。この永きにわたる期間にいろいろな経験をさせていただきました。
勤務医のころは院長に叱られるくらいで済んだのですが、自分で開業するとなるともっと深刻な悩みに苛まれることも多くありました。
患者さんとのトラブルやクレームで夜も眠れないこともありました。患者さんに大声で怒鳴られたことも何回かあります。さらに、「訴えるぞ!」と凄まれたこともあります。いろいろ経験をさせていただきました。
自分自身のミスはもちろん、スタッフのミスへの対応、そしてインターネット上に悪評を書かれたこともありました。患者さんのご自宅にうかがってお詫びを申し上げたことも数回あります。その渦中にいるときには、地獄に近いものを見ているような気持ちだったことを思い出します。
もちろん、悪いことばかりではなく、全顎治療を終えて患者さんと手を取り合って喜びを分かち合えたうれしい思い出もたくさんあります。
よかったことも苦しかったことも、いま思い返せばすばらしい勉強の機会として、自身の学びとするチャンスだったのだと感じます。
机の上で勉強することよりも、必要に迫られて必死に対応したことのほうが自分自身の血となり肉となっていることを実感します。
本書に執筆されている先生方は、非常に経験豊富な方々です。
私と同様に、いや私以上にさまざまな経験を積まれており、私以上に学びを深められてきた方々です。
私が歯科医師になったころ、そして開業したころは、本書で示されているような経験談を見聞する機会はなかったように思います。苦しみながらも自分自身で出口を探してきたような気がします。おそらく、執筆された先生方も同じだったと思います。
本書を手にされた若い先生方は本当にラッキーだと思います。困難に対峙したときの心構えや対応法など、生きた知識が本書にはふんだんに書かれています。
もちろん、本書を読むことですべての問題が解決するわけではありません。しかし、ここで得た情報をもとに、自分で考えることができるようになると思います。たとえるならば、山の麓から頂上を目指すのではなく、3合目、5合目、あるいは7合目から頂上を目指せるということです。
読者の先生方が本書を活用されて、直面するさまざまな出来事の解決の糸口としていただけることを心から祈念しております。
2022年 12月
編集委員 成富健剛
CONTENTS
成富健剛(なりとみ けんごう)
1988年 福岡歯科大学卒業
1997年 なりとみ歯科開院
2015年 三養基・鳥栖地区歯科医師会監事
現在に至る
山村洋志明(やまむら よしあき)
2000年 愛知学院大学歯学部卒業
2006年 すまいる歯科開業
2020年 すみれ歯科こども歯科クリニック開業
現在に至る
小畑 真(おばた まこと)
1998年 北海道大学歯学部卒業
同年 医療法人仁友会日之出歯科真駒内診療所勤務
2011年 司法試験合格
2016年 弁護士法人小畑法律事務所設立
現在に至る
杉元信代(すぎもと のぶよ)
兵庫県立総合衛生学院歯科衛生士学科卒業
沸教大学社会学部社会福祉学科(現社会福祉学部)卒業
(株)Himmel/DH-R
現在に至る
伊藤祐子(いとう ゆうこ)
1998年 東洋英和女学院大学卒業
2014年 (株)グランジュテ設立
現在に至る
本のエッセンスは、書籍の「はじめに」や「刊行に寄せて」に詰まっています。
この連載では、編集委員や著者が伝えたいことを端的にお届けするべく、おすすめ本の「はじめに」や「刊行に寄せて」、「もくじ」をご紹介します。
今回は、『しくじり事例から学ぶ歯科医院トラブル解決塾 クレームからハラスメントまで』です。