- 来院患者数の維持や診療収入の確保のためには、ある程度の経費をかける必要があると思います。どのような経費にどれぐらいかけられるのでしょうか。 福岡県・Mデンタルクリニック
-
1.政策型経費と抑制型経費
歯科医院におけるおもな経費を挙げますと、約20科目前後になると思います。そのなかで患者さんや収入獲得へ積極的にかける経費を「政策型経費」として考えます。また、水道光熱費や事務用品費など、1円でも減らせるよう節約すべき経費を「抑制型経費」とし、政策型経費と分けて考えます。
2.各経費の考え方と対応
患者さんへ直接働きかける経費として、ホームページの維持・運用費用の他、InstagramなどSNSに関する運用費用等は、おもに広告宣伝費に計上されますが、弊社が行う収支アンケート調査における広告宣伝費の比率は、収入に対して約0.8%を占めています。内容によってはこの比率を超える場合がありますので、その場合は、患者さんへの認知度など費用対効果を検証するようにします。
また、正確な診断を行うことや、患者さんに対する快適な診療を維持するために、最新の医療機器の導入、あるいは内外装の改装などは必要となる経費ですが、こちらは減価償却費あるいはリース料として計上されます。同調査における収入に対する比率は、それぞれ6.7%、0.9%です。
地代家賃は、経費のなかでも大きな比率を占める代表的な経費です。地代家賃を低く抑えるに越したことはありませんが、単価が高いことは相対的に立地がよいことと考えられますので、立地を活かした積極的な展開や患者さんへのアピールを行うことが可能です。そのような意味では、地代家賃という経費は積極的にかける経費として捉えられますが、収入が増えても減っても金額が変わらない固定経費となりますから、目標としては収入に対して10%以下を目指すとよいでしょう。
資産に計上される設備の場合、固定資産税など租税公課への影響がありますが、その比率は約1.0%となっています。設備投資を長期的な成長のための経費として捉え、融資を受けた場合の利子割引料として0.5%、設備の修理となる修繕費として0.8%など、減価償却費、リース料、地代家賃、租税公課と併せて設備投資率として捉えられます。同調査における、収入に対する設備投資の比率は16.0%ですが、自院の収支実績と比較すると、設備投資にどれぐらいのウエイトをかけているかを確認できます。
その他、研究図書費や研修費は、院長、あるいは勤務医や歯科衛生士などスタッフが受講したセミナー費や講習会費が該当します。こちらも、直接に患者さんの増減を左右するものではありませんが、診療レベルが上がることで患者さんの満足度や信頼度の向上に繫がります。長期的には増患や増収へ影響を与える経費として大切な科目です。収入に対する比率は1.1%となっています。◉歯科医院において経費となる内容のものは、いずれも歯科医院を維持するために重要な経費ですが、積極的にかける経費と抑えるべき経費にメリハリがつくと、全体の適切な経費管理に繫がります。設備投資や、実習等を伴う講習会費用になどについては、投資する金額が大きいことから、年度ごとの経費計画を立てるとよいでしょう。
歯科医院の永続性を考える場合、短期的に経費を削減して利益(所得)を確保することよりも、長期的な視点で検討を進めながら、より安定的に収入を維持できる態勢づくりが大切です。長期的に収入に結びつくと判断される経費については、積極的な対応を重視してください。門田 亮
●デンタル・マネジメント・コンサルティング

▽月刊デンタルダイヤモンドのバックナンバーはこちら▽
https://www.dental-diamond.co.jp/list/103
▽Q&Aのバックナンバーはこちら▽
https://dental-diamond.jp/qanda.html
学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2025年1月号より「医院経営にかかる経費を見直そう」についてです。