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第65回春季日本歯周病学会学術大会(大会長:佐藤秀一氏/日大歯)が6月3㈮、4日㈯の両日、「歯周病学クロニクル ―そして我々はどこに向かうのか―」をテーマに、京王プラザホテル(東京都新宿区)で開催された(参加者数:約1,000名)。
シンポジウム「歯周病検査のクロニクルと展望」は日本口腔検査学会との共同シンポジウムとして行われ、同学会理事長の福本雅彦氏(日大松戸歯)が登壇。口腔と全身が切り離せない関係であることは周知されている一方で、歯科においては全身に関連した臨床検査が行われていないことが多いと指摘。医療の質を確保するためには、EBM(根拠に基づいた医療)が必要であり、それを担保するためにも検査は重要であると述べた。
シンポジウム「インプラント周囲炎のクロニクルと展望」では、林 丈一朗氏(明海大歯)が登壇。インプラント埋入患者のメインテナンスにおいては、BOPやX線画像から周囲炎の早期発見を心がけ、粘膜炎の段階でプラークコントロールを徹底することにより、硬組織の改善が望めると述べた。
シンポジウム「歯周外科治療のクロニクルと展望」では、閔 成弘氏(テキサス大学・写真)が登壇。根面被覆術のVISTAテクニックと、閔氏らが研究・開発を進める骨増生術のAMORについて解説。VISTAテクニックは、1本の縦切開から結合組織を挿入する低侵襲な手法であり、血流も阻害しないため、良好な治療成績が望めることを紹介した。
歯科衛生士シンポジウム
歯科衛生士シンポジウム「歯科衛生士に知って欲しい女性の身体の基礎知識について」では、まず永石匡司氏(日本大学医学部)が登壇。思春期・性成熟期・更年期における身体の変化や女性特有の疾患を解説しました。加えて婦人科の受診率の低さを挙げ、婦人科系疾患だけではなく、女性にとって身近な月経痛の治療も行えるため、我慢せずに何か気になることがあれば受診してほしいと訴えました。
続いて川本亜紀氏(日本大学歯学部附属歯科病院)が、女性ホルモンの変動に伴う歯肉の出血や腫脹、炎症などを解説。妊娠期・更年期における口腔内の変化を示し、セルフケアとプロケアを効果的に行うためのポイントを紹介しました。また、女性ホルモンの影響を大きく受ける女性は、男性と比較して歯周病のリスクが高いため、ライフステージに沿った対応がより重要であることを強調しました。
歯科衛生士教育講演「口腔と全身の健康を操る生態系―口腔細菌叢と腸内細菌叢の基礎知識―」では、山崎和久氏(理化学研究所生命医科学研究センター)が、口腔内細菌叢は食事や砂糖の摂取、他人との接触を経て形成され、20歳ごろに完成すると解説。一度確立した口腔内細菌叢を変化させるのは難しいため、それまでの期間に口腔内環境を整えることが重要であると強調しました。
また、近年の調査では、全身疾患をもつ患者の腸内から口腔細菌が検出されるなど、口腔の健康が腸内環境を介して全身の健康に寄与することが示されており、継続的な口腔衛生管理が必要であると述べました。
ベストデンタルハイジニスト賞は、「ラポール確立の重要性を再認識した広汎型慢性歯周炎Stage Ⅳ Grade Cの一症例」の演題で発表した、宇井みゆき氏(三重県・菰野きむら歯科:写真右)が受賞しました。