Q&A 歯科一般 口腔がん早期発見のポイント|デンタルダイヤモンド 2025年12月号

Q&A 歯科一般 口腔がん早期発見のポイント|デンタルダイヤモンド 2025年12月号

学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊デンタルダイヤモンド 2025年12月号より「口腔がん早期発見のポイント」についてです。

口腔がんの早期発見率がかなり低いという話を耳にしました。患者の自覚症状もほぼなく、口内炎などと区別がつきにくいため、早期発見できるか自信がありません。口腔がんの早期発見のポイントを教えてください。 岡山県・Z歯科

 口腔がんは高齢化の影響もあり、罹患者数が増加傾向にある疾患です。早期発見・早期診断が生命予後に直結するものの早期発見率は依然として低く、初診時にすでに進行しているケースも少なくありません。その背景には患者側の自覚症状の乏しさや、口内炎などの良性疾患との鑑別の難しさなどが影響していると考えられます。
 日常の歯科診療のなかで、口腔がんの早期発見に寄与するためのポイントを整理します。
1.粘膜の視診・触診を習慣化しよう
 口腔がんは直接肉眼で観察でき、手指で触診できる疾患ですが、一般歯科診療ではう蝕や歯周病にフォーカスされ、粘膜観察が軽視されがちです。初期の口腔がんでは痛みや出血などの自覚症状がなく、粘膜の白色変化や発赤、びらんや潰瘍、腫れやしこりとして現れることが多いため、これらの所見を見逃さないよう、日ごろから患者からの訴えがなくても口腔粘膜の視診(必要であれば触診も)を習慣化することを推奨します。
 また、粘膜の変化が認められたときには、記録・比較のため粘膜の口腔内写真を撮影しておくことも重要です。
 触診では硬結が大事な所見の1つになります。硬結とは、がん細胞の増殖と周囲組織への浸潤により組織が硬くなった状態で、口腔がんの所見として、触ると硬く感じるしこりとして現れることがあります。硬さだけで良悪性を完全に判断できるものではないものの、重要な所見の1つです。
 加えて、口腔がんは顎の下や首のリンパ節に転移しやすいため、頸部も触診し、リンパ節の腫れなどがないか(触知できるリンパ節の有無、大きさ、硬さ、可動性など)なども確認します。

2.患者の訴えを過小評価せず、迷ったら専門医に繫ごう
 口腔がん初期の粘膜変化は、非特異的な所見を呈することが多く、通常の口内炎や義歯、歯の鋭縁部による外傷、感染などとの鑑別が困難なことが多いです。とくに患者がよく訴える「口内炎」は、口腔がんの初期症状としばしば混同されます。
 口腔衛生状態の不良、う蝕による歯の鋭縁部、歯周病で動揺・傾斜した歯、不適合な義歯や歯冠補綴物などの粘膜への物理的な刺激など、原因・リスクとなり得る口腔の問題の対処をしたにもかかわらず、症状が改善しない(潰瘍・紅斑・白斑が2週間以上改善しない、あるいは増大傾向を示すなど)場合は、留意が必要と考えられます。とくに、境界が不明瞭で硬結を伴う潰瘍、触ると痛みのない白斑・紅斑は警戒すべき所見です。
 このような場合は「よくある口内炎だから様子をみてください」で済ませず、口腔がんの確定診断には病理検査が必須のため、早期に専門医へ紹介する判断が求められます。また逆に、視診・触診上は粘膜変化や腫脹などの臨床的変化は強くないにもかかわらず、相変わらず「しみる」「痛い」「腫れている」といった患者の訴えが続くなどの診断に迷うケースなども、ためらわずに専門医(口腔外科、がん診療連携拠点病院など)へ紹介する姿勢が望ましいと考えます。


 口腔がんの早期発見には、
1)日常診療のなかで粘膜の視診・触診を習慣化し、粘膜の変化につねに留意すること
2)患者の訴えを過小評価せず、「気のせい」「大丈夫」と放置せずフォローアップに努め、経過のなかで「何かおかしい」と迷ったら専門医に繫ぐこと

が重要です。

上野尚雄
国立がん研究センター中央病院


デンタルダイヤモンド 2025年12月号 表紙

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