2022年保険改定対応版
刊行にあたって
2016 年に日本老年歯科医学会が発表した口腔機能低下症に関する学会見解論文を基盤に2018 年4 月に口腔機能低下症の検査・管理が保険導入されました。
本書はなじみのない口腔機能低下症の解説のため、学会監修の書籍として、保険導入の立役者であり、元理事長であった櫻井 薫先生と学術委員長であり学会見解論文の責任者であった私が編著を担当させていただきました。2 年後の2020年の保険改定に合わせて、前理事長であった佐藤裕二先生と櫻井先生、私で第2版を編集させていただきました。そしてこのたび2022 年の保険改訂にあわせて、第3 版を出版させていただきました。編著は現在理事長を拝命しております水口が担当させていただいていますが、元・前理事長と、何といっても見解論文の作成以来、苦楽を共にしてきた学術委員会のメンバーのご尽力によってなされていることを改めて申し上げたいと思います。
さて、保険収載から4 年が経過した口腔機能低下症ですが、多くのエビデンスが集まってきました。国際的にも認知されはじめ、この3 月に老年歯科医学の英文誌であるGerodontology ではOral Hypofunction(口腔機能低下症)and OralFrailty(オーラルフレイル)のSpecial Issue が発行されました。このように口腔機能低下症やオーラルフレイルが広がっていくと同時に問題点も明らかになっています。日本老年歯科医学会では昨年12月に「口腔機能低下症とオーラルフレイルに関するワークショップ」を開催いたしました。そこでは口腔機能低下症に関連の深い会員に加えて、日本歯科医師会から佐藤 保先生、オーラルフレイルの提唱者である飯島勝矢教授、厚生労働省の小嶺祐子先生にもご参加いただき、問題点を洗い出し、その対策を検討いたしました。さまざまな議論の事項がございましたが、まずは「口腔機能低下症」の病名をもっと周知していただくことが大事で、周知しやすいようにすることが大事であることが強調されました。学会として、さらに口腔機能低下症をブラッシュアップし、歯科医療関係者がもっと国民の健康長寿に貢献できるように努める決意であることを表明し、刊行あたってのご挨拶とさせていただきます。
2022 年5月
東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野
水口俊介
CONTENTS
https://www.dental-diamond.co.jp/item/1079
水口俊介(みなくち しゅんすけ)
1983年 東京医科歯科大学歯学部歯学科卒業
1987年 東京医科歯科大学大学院歯学科研究科修了
1989年 東京医科歯科大学歯学部高齢者歯科学講座助手
2001年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 口腔老化制御学分野講師
2005年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野准教授
2008年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 全部床義歯補綴学分野教授
2013年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野教授
《所属学会》
日本老年歯科医学会、日本補綴歯科学会、日本咀嚼学会、日本義歯ケア学会
佐藤裕二(さとう ゆうじ)
1982年 広島大学歯学部卒業
1986年 広島大学大学院修了・歯学博士
1986年 歯学部附属病院助手
1988年 アメリカ合衆国 National Institute of Standards and Technology 客員研究員
1990年 広島大学歯学部講師(歯科補綴学第一講座)
1994年 同上 助教授
2002年 昭和大学歯学部教授(高齢者歯科学)
《所属学会》
日本老年歯科医学会、日本補綴歯科学会、日本口腔インプラント学会、日本顎関節学会、日本歯科医療管理学会、日本義歯ケア学会
櫻井 薫(さくらい かおる)
1978年 東京歯科大学卒業
1982年 東京歯科大学大学院歯学研究科修了
1984年 アメリカ合衆国タフツ大学歯学部 Visiting Assistant Professor)
1993年 東京歯科大学歯科補綴学第一講座助教授
1997年 東京歯科大学歯科補綴学第一講座主任教授
2006年 東京歯科大学有床義歯補綴学講座主任教授(講座名変更により)
2015年 東京歯科大学老年歯科補綴学講座主任教授(講座名変更により)
2016年 東京歯科大学大学院歯学研究科研究科長
2019年 東京歯科大学定年退職
2019年 東京歯科大学名誉教授
2019年 こばやし歯科クリニック(東京都江戸川区)顧問
《所属学会》
日本老年歯科医学会、日本補綴歯科学会、日本歯科医学教育学会
本のエッセンスは、書籍の「はじめに」や「刊行に寄せて」に詰まっています。
この連載では、編集委員や著者が伝えたいことを端的にお届けするべく、おすすめ本の「はじめに」や「刊行に寄せて」、「もくじ」をご紹介します。
今回は、『2022年保険改定対応 かかりつけ歯科医のための口腔機能低下症入門』です