Q&A 矯正 マウスピース矯正時のディスキングの影響|デンタルダイヤモンド 2019年4月号

マウスピース矯正時に行うディスキングは、カリエスリスクを高めることはないのでしょうか。また、過度なディスキングによる審美的な問題はありませんか。

──富山県・N歯科

マウスピース矯正時のディスキングの影響

まず、ディスキングとは、隣接面エナメル質の削除のことで、interproximal reduction(IPR)と呼ばれます(図❶)。ディスキングを行うことによって、歯冠幅径が減少します。
 ディスキングを行う目的は、

  • マイナスの上下顎歯列のトゥースサイズディスクレパンシーを解消すること
  • 歯冠の形態を修正することにより、歯間のブラックトライアングルを作らないこと
  • コンタクトポイントを広くして、排列した歯列を維持しやすくすること

などが挙げられます。

スペースを得るためにディスキングを行う量としては、それぞれの歯の隣接面から最大で0.25mm、1歯あたり0.5㎜削除しても問題ないとされています。6前歯すべてに行うと、歯冠幅径は全体で3.0mm、小臼歯、大臼歯まで行うと約6.0mm減少できます(図❷)。この範囲であれば、カリエスリスクが高くなることはありません。

また、ディスキングは一度に多く行うのではなく、数回に分けて行うのがよいでしょう。ダイヤモンドディスクなどでディスキングされた隣接面はエナメル質が粗造になっており、隣接面カリエスの原因となる可能性があるため、ディスキングされた隣接面は滑沢に処理する必要があります。ディスキング後にフッ化物入り予防ペーストを用いるのもカリエス予防法のひとつでしょう。したがって、きちんとした予防さえ行えば、カリエスリスクは高くなることはないと考えてよいでしょう。

ディスキングを行うことにより歯の形態は変わりますが、個々の歯の自然な歯冠形態を保存しつつ、適切な量のディスキングを行えば、審美的な影響はほとんどないでしょう。

図❶ ディスキング。メタルストリップスで隣接面を削る

図❷ 下顎前歯に約3.0mmのトゥースサイズディスクレパンシー。ディスキングを行うことでスペースを確保できる

【参考文献】
1)Sparks A: Interproximal Enamel Reduction and Its Effect on the Long-term Stability of the Mandibular Incisor Position (thesis). Birmingham: Univ of Alabama, 2001.
2)Alexander, R.G. “Wick”: The 20 Principles of the Alexander Discipline. Quintessence Pub Co, 2008.

公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会
学術委員会

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