Q&A その他 口腔内写真撮影における スマホカメラの可能性|デンタルダイヤモンド 2023年9月号

学術・経営・税務・法律など歯科医院での治療・経営に役立つQ&Aをご紹介いたします。今回は、月刊 デンタルダイヤモンド 2023年9月号より「口腔内写真撮影におけるスマホカメラの可能性」についてです。

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●昨今はスマートフォンの性能が向上したため、口腔内写真の撮影は一眼レフカメラではなく、スマホでもよいのではと考えています。スマホで撮影した写真の質や、スマホで撮影するメリット・デメリットを教えください。            岩手県・K歯科クリニック

1.約半数のケースはスマホカメラでも対応可能
 ご質問のように、昨今はスマホのカメラ機能が著しく向上していることもあり、世界のデジタルカメラ販売台数はピーク時の10%以下まで落ちています。それくらい「デジタルカメラ」という機能は、いまや「スマホでよい」という認識が浸透しています。
 しかし、歯科の場合、高画質で正確な色再現が必要なシェード写真や、画角や焦点距離に指定がある規格写真を撮るためには、どうしても一眼レフである必要があります。しかし、「病態の記録」や「歯周病のチェック」など、必ずしも一眼レフでなくとも対応できるケースが多いことも事実です。
 当院では、歯科用ライト「LAMP・U(フォレスト・ワン:図1)」につねにセットされている院内用スマホがあり、撮影時にはこれを取り出してカメラアプリを起動します。そして、撮影データは自動でクラウドへアップロードされるよう設定してあるので、後からPCで写真の管理を行うだけです。
 たとえば、5枚法の撮影後に顔貌を撮り、PCで写真の整理をする程度の作業なら5分もあれば終わります。
2.誰でも安定して70点を取りに行けるのがスマホカメラ
 図2に作例を示します。二者に大きな差はないように見えますが、拡大すると細かなディテールや透明感の表現で一眼レフに軍配が上がります。しかし、当院ではシェード写真以外はスマホの出番も多く、頻度の割合はスマホ:一眼レフ=7:3ほどです。
 一眼レフは作品のクオリティが撮影者の技術に依存するのに対して、スマホは誰が撮っても一定のクオリティが保たれます。また、機材が小さく、軽くて済むので、女性スタッフでも気軽に扱えるのは大きなメリットでしょう。
3.スマホ撮影で注意すること
 スマホは機種によって画質や色のバランスに大きな差があるので、性能が安定しているGalaxy(Samsung)、iPhone(Apple)、Xperia(Sony)の3社の高性能機をお勧めします。また、アプリによっては「綺麗に見えるような味付け」をしてしまうものもあるので、「マニュアル撮影設定」があるアプリを使用したほうが仕上がりが一定に保たれるので安心です。当院では、標準カメラにマニュアル機能があるGalaxyを使っています。
 また、スマホの場合は機種によって焦点距離・画角がバラバラになってくるので、機種や撮影法を統一することで、口腔内の経時的な変化も正確に比較できるようになります。
 以上の内容から、正しい撮影法を準拠し照明の工夫さえすれば、スマホでも口腔内写真を撮ることは可能です。70点平均の写真を安定的に出せて、管理も楽。しかも軽くて気軽に使えるので、これまでよりも積極的に口腔内撮影ができるようになると思います。

表❶ 梅毒の病期分類と症状(参考文献4)より引用改変)
図❶ LAMP・U(フォレスト・ワン)

図❷ 一眼レフ(CANON R5 105mm/F22:左)とスマホ(Galaxy S22[×3倍レンズ]:右)で撮影した写真。照明環境はLAMP-Uを用いた。どちらも引きの写真では大差を感じないが、拡大時は臼歯部のシャープネスや歯肉の血管の表現力などにおいて、一眼レフに分があることがよくわかる

矢島昇悟
●東京都・青山通り歯科

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