Dd診断力てすと『顎下部に腫脹を認めた病変』デンタルダイヤモンド 2018年12月号

山川延宏 Nobuhiro YAMAKAWA 桐田忠昭 Tadaaki KIRITA
奈良県立医科大学 口腔外科学講座
〒634-8521 奈良県橿原市四条町840


図❶ 初診時の顎下部

図❷ 初診時のパノラマX線写真

図❸ 初診時のCT画像


患者:79歳、男性
主訴:左側下顎の違和感、顎下部の腫脹
既往歴:脳梗塞、前立腺がん
現病歴:初診2ヵ月前より左側下顎の違和感を認めた。歯科医院を受診し、左側下顎臼歯部の補綴物(インプラント上部構造)を除去し、洗浄。抗菌薬を処方されたが症状の改善を認めないため、当科紹介受診となった。
現症:体格中等度、栄養状態は良好。発熱などの全身症状はなく、左側顎下部に約35×30mmの弾性硬の腫脹を認めた(図❶)。可動性はなく、圧痛も認めなかった。左側下唇には軽度の知覚異常を認めた。左側下顎臼歯部にはインプラントが埋入されており、相当部歯肉に瘻孔様の隆起を認めたが、排膿はなかった。インプラントの動揺はなく、骨植は良好であった。
初診時血液検査:【末梢血】白血球数 75×102/μL、赤血球数 348×104μL、ヘモグロビン 11.6g/dL、【生化学】CRP 0.9mg/dL、TP 6.3g/dL、Alb 4.3g/dL、【腫瘍マーカー】SCC 0.7ng/dL(正常値:0.0~1.5)、CEA 1.6ng/dL(正常値:5未満)
画像所見:パノラマX線写真では左側臼歯部にインプラントが埋入されていたが、周囲の骨の吸収像や骨の硬化像は認めなかった(図❷)。造影CTでは左側下顎体部尾側から骨内側に軟部腫瘤があり、腫瘤は造影効果を認めた(図❸)。内部は均一で、境界は比較的明瞭であった。また、膿瘍を疑う液貯留は認めなかった。PET検査では、腫瘤に一致してSUVmax=17.6のFDGの集積を認めた。

Q 最も疑われる疾患名は?

① 顎下腺腫瘍
悪性リンパ腫
③ 顎骨骨髄炎

前立腺がん頸部
  リンパ節転移