Dd診断力てすと『下唇部の知覚鈍麻』デンタルダイヤモンド 2017年2月号

大澤孝行 Takayuki OHSAWA
横浜市立市民病院 歯科口腔外科
〒240-8555 神奈川県横浜市保土ケ谷区岡沢町56


図❶ 初診時の骨シンチグラフィー

図❷ 初診時のパノラマX線写真


患者:55歳、男性
主訴:右側下顎臼歯部の疼痛および右側下唇部の知覚鈍麻(麻酔がかかったような感じ)
既往歴:ウイルス性肝炎、帯状疱疹
歯科治療歴:10年前に右側臼歯部に歯科インプラントを施行したが、数ヵ月で脱落。
生活歴:喫煙;20本×30年、飲酒;ビール1本、焼酎1合/日
現病歴:2週間ほど前に上記主訴を認め、当院神経内科を紹介され、受診。精査目的に入院加療となった。局所的因子が疑われ、当科を受診した。
現症:全身状態は良好。原因不明の外転神経麻痺(複視)を認め、ビタミン剤を服用中。開口障害はなし。神経孔部のトリガーポイントはあきらかではない。右側下唇からオトガイ部皮膚にかけて知覚鈍麻(二点識別検査:4~5mm)を認めた。右側下顎臼歯部は欠損し、疼痛を認めた。歯肉の発赤腫脹、骨露出はなし。
胸部X線検査にて胸郭は釣鐘状を呈し、脊柱側彎が認められた。頭部X線検査にて頭蓋骨縫合部の骨化不全が認められた。
臨床検査所見:血液検査では、特異的所見なし。髄液検査では、細胞数の増加はなく安定。
画像所見: 占拠性病変はあきらかではなかった。骨シンチグラフィー(図❶)で前頭骨への集積を認めたが、顎骨への集積は軽度であった。MRIの脂肪抑制像で、右側下顎骨部および前頭骨、第3頸椎部に高信号を認めた。パノラマX線写真(図❷)では右側下顎臼歯部に骨硬化像を認めた。顎骨骨髄炎としても矛盾しない所見を得た。

Q 最も疑われる疾患名は?

① 下顎骨骨髄炎
下顎骨腫瘍(固形癌)
③ 造血器腫瘍

三叉神経痛
⑤ 脳腫瘍