Dd診断力てすと『舌辺縁部の腫脹』デンタルダイヤモンド 2020年6月号

3.神経鞘腫

神経鞘腫は、末梢神経のシュワン(Schwann)細胞に由来する良性腫瘍で、原因は不明である。軟部腫瘍のなかでは脂肪腫についで多くみられ、神経の存在するところであればどこにでも生じる。無痛性で発育は非常に緩慢であり、自覚症状に乏しいため偶然発見されることが多い。そのため、受診までの期間は長く、平均3年程度と報告されている。好発部位は四肢と頭頸部の皮下で、顎口腔領域では非常に少ないが、そのなかで舌に多いとされる。一般に成人に多くみられ、性差は著明ではない。外科的摘出により予後は良好である。

病理組織学的には、Antoni A型とB型の2型に分類される。A型は紡錘形の核をもつ腫瘍細胞が特徴的な棚状配列を示すもので、B型は腫瘍細胞の疎な網状配列と間質組織の空胞変性からなる像を呈し、これら両型が混在する像も数多く認められている。顎口腔領域では、Antoni A型が多く、本症例も病理組織検査よりAntoni A型の診断を得た。また、免疫組織化学検査より、S-100タンパク抗体によるPAS染色では、同タンパクは腫瘍細胞内で強陽性を示す特徴がある。

処置および経過

局所麻酔下にて舌腫瘤の直上より切開を加え、腫瘤の周囲組織を鈍的に剥離しながら一塊として摘出した。腫瘤表層は薄い被膜で覆われていた。約3ヵ月を経た現在まで再発なく経過良好である。

摘出標本

直径30mm×18mm×17mm大の腫瘤。
辺縁は平滑で割面は浮腫状であった(図❹)。

病理組織学的所見

核の明瞭な柵状配列と細線維構造が交互に配列するVerocay小体を認め、Antoni A型神経鞘腫であるとの診断を得た。短紡錘形核と細線維性間質から構成され、明瞭な核の柵状配列を認める。細胞異型に乏しく、核分裂像は認められない(図❺)。

病理組織学的所見

免疫染色では、腫瘍細胞はびまん性にS-100タンパク陽性を示した。(図❻)。

図❹ 摘出標本

図❺ 病理組織学的所見

図❻ 免疫組織化学的所見

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